唯一の法則
何千年ものあいだ変わらないことが一つある。それはあらゆる時代の哲学者が下した結論だ。人間の歴史と同じだけ古い真実だ。ゾロアスターは2500年前にペルシアの信徒に伝えた。2400年前の中国では、孔子が説いた。道教の開祖、老子も函谷関で弟子に教えた。釈迦は同じ頃、聖なるガンジス川のほとりでこれを説いた。ヒンドゥー教の聖典にはその1000年前に、同じことが語られている。彼らのすべてが結論した事とは、人からされたくないことを人にしてはいけないということだ。2000年前、キリストはその言葉をわずかに変えた。「人からして欲しいことを、人にしてあげなさい」。これが人間の歴史の中で、黄金律と呼ばれてきた唯一の法則である。
信頼を築く十原則
①議論しない人と議論しても、あなたが得るものはほとんどない。議論しても大抵は双方が、自分の方が正しいという確信を深めるだけ。あなたは正しいかもしれない。だが議論が何ももたらさなければ、完全に間違っていても同じだ。
②「あなたは間違っている」と決して言わない
人の間違いを指摘するのは、敵をつくるだけである。「あなたは間違っている」と言われて、論理的に反応する人はほとんどいない。大抵の人が感情的に反応し、防衛的になるだけだ。
③間違いを潔く認める
自分の過ちを潔く認めると、相手は大抵寛大になり、気前がよくなる。相手の頭の中で、その過ちがたちまち目減りする。だが責任逃れをしようとしたり、過ちを認めることを拒否したりすると、それだけで周囲の怒りが倍加して、もとの間違いがますます重大に見えるという、ろくでもないことになる。
④親しみをこめて話しかける
愛想よくにこやかに挨拶をするのは、こう語りかけることだ。「あなたは私が時間を使う価値のある人です。あなたは重要な人です。」この密かなメッセージが、途方もない力を持つ。
⑤共感を得る
会話が「イエス」から始まれば、最も基本的なレベルで共感が生じている。しかしそれを影響力に変えるには、共感という土台が存続しなければならず、そのため常に相手の立場から眺めなければならない。
⑥手柄をゆずる
それが誰のアイデアかとか、最初に言ったのは誰かとか、最初に試したのは誰かといったことは、長い目で見れば当人しか覚えていない。人がいつまでも覚えているのは、誰かの度量の大きさや、誰かの気前の良さだ。手柄を他人にゆずればゆずるほど、人々の記憶に強く残り、結局は自分が手柄を立てる。
⑦人の身になる
人の身になって考えることを心がけると、相手の気持ちや考えに同情できるようになる。そして心から正直な気持ちで、こう言うことができるだろう。「私もあなたの立場だったら、きっと同じ気持ちになるでしょう」。今ではほとんど耳にしなくなったが、こういう文句は相手をふと立ち止まらせて、こちらを向かせる。そしてこちらの考えをずっと受け入れやすい心境にする。
⑧気高い精神に訴える
私たちは誰もみな、心の底では理想主義者である。美しく響く動機を抱くのが好きなのだ。「あなたは正しく誉れ高い、嘘偽りのない行いのできる人だ」というメッセージを伝えよう。
⑨物語を共有する
人はその他大勢のような扱いをされたくないし、自分の人生を平凡だとも思いたくない。自分は重要な存在だと思いたい。そして、そう思うことのできる一番の方法は、自分をもっと大きな物語と結び付けることなのだ。
⑩対抗意識を刺激する
競争は優れた成果をあげることに加えて、仲間意識と団結心を育てることにも貢献する。
人づき合いの三原則
①ブーメランを埋めよ批判しない、非難しない、小言も言わない。人は自己保存の生き物だ。自分の幸福を脅かすあらゆるものを本能的に追い払い、否定しようとする。
事実がどうであれ、人から非難されたい人間はどこにもいない。批判された相手は防衛へと駆り立てられ、こちらの言う事すべて疑われるか、信用されない。批判的な発言は、まるで目に見えないブーメランのように働くのだ。あなたのブーメランを埋めなさい。
②美点を肯定する
人間には自分が尊重される重要な人間だと思いたいという生来の切実な欲求がある。人の美点を肯定するのと、お世辞を言うのとは違う。人を肯定するにはその人をよく見て、肯定すべきところを見抜かなければならない。相手をよく理解して、何が本当に重要なのかに気付かなければならない。
③強い欲求を起こす
人を行動に向かって動かしたければ、まずその人の中に深い欲求を起こさなければならない。人を扱う時には指図するのをやめ、相手が何を欲しがっているのか見つけようとすれば必ず成功する。人を動かす力を持てるのは、相手の立場に身を置ける人だけである。
人に好感をもたれる六原則
①相手の関心事に関心をもつ相手に心から関心を持てば、ほんの数分間で友人ができる。相手の関心を引こうとしている時に数ヶ月かかってできる友人よりも、もっと多くの友人ができてしまう。対人関係の基本原則だ。
②笑顔を忘れない
笑いかければうれしさが伝わる。その人に出会えて、一緒にいられて、言葉を交わせてうれしいという気持ちが相手に届く。すると、相手も、その人と一緒にいるのがうれしくなる。元手いらずで利益は莫大。あげてもあげなくても減らないが、もらったほうは豊かになる。
③名前をよぶ
人は自分の名前に、地球上の他のどんな名前より関心があることを忘れてはいけない。名前を覚え、それをすらすら口にするのは、相手に対するさりげない、効果的なほめ言葉だ。
④話を聴く
相手の話をよく聴くことには、とても強い力がある。相手の話をじっくり聴けば、その時いい印象を与えるだけでなく、長い付き合いにつながる堅固な架け橋ができる。自分の考えを保留してまでこちらの考えを重んじてくれる人と、一緒にいたくない人間がいるだろうか。
⑤相手にとって重要なことを話題にする
人に関心をもってもらいたかったら、関心をもってもらえることを話さなければならない。さもないと耳を貸してもらえないか、うんざりされるだけである。
⑥他人をちょっと幸せにする
あらゆる人間関係をよくする秘訣は、何か価値あるちょっとしたことをしてくれること、継続的にそうしてくれること。どんな時にも相手の気分を少しよくしてあげることだ。