大企業の本質
大企業の本質は、一言で表すと「資産は豊富だが、社内調整コストがかかりやすい」構造の組織であるということ。反対にベンチャー企業は、資産は少ないが社内調整コストはとても少ない。つまり、一般的には「社内資産と社内調整の容易さは反比例する」と言える。
この「社内調整コストの煩雑さ」こそ、言い換えると大企業病であり、それをハックして改善することができれば、大企業の若手社員でも、自己実現ができるはずである。それは、企業にとっても新しい価値創造を実現する上で、大事な活路の1つになるはずである。
ONE JAPAN加盟団体1600社への調査の結果、大企業病として、主要なものは次の5つに分類される。
- 内向き・社内至上主義
- 縦割り・セクショナリズム
- スピード欠如
- 同質化・新陳代謝不全
- 挑戦・仮説検証不足
これらの症状に共通する重要な要素として「すべては関係性の課題である」ということがある。こうした症状が、1人の社員、1つの部署、1つの商品の不具合やミスで起こるのではなく、複数の社員や部署の関わり合いの中で起こるものがほとんどである。これが、多くの若手が「どうせ何をしたって変わらない」と諦めモードになってしまう原因でもある。しかし、その関係性そのものに個人や、その個人の周囲にいる少数の仲間の力で働きかけることはできる。
内向き・社内至上主義を打破するスキル
・「実演販売」でトップにアプローチ
トップへの実演につなげられたのには2つのポイントがあった。1つは、こんなこともあんなこともできると言って期待値を高めるのではなく、「未来への投資」ということを伝えた上で最初の一歩の了解を得ること。現状をきちんと共有した上で「小さく初めて、ダメならやめる」と伝えると、既存の業務に影響がでない範囲でやってもらえればいいと反対されなかった。
もう1つは、日々の業務にきちんと向き合うこと。目の前の仕事を疎かにしない日々の積み重ねがあるからこそ、上司や周囲からも協力的に見守ってもらえた。
・クオリティドリブン説得
斬新なアイデアでも「実現できたら面白そう」と意思決定者に思い込んでもらい、社内からリソースを獲得する必要がある。そこで効果的なのが、やたら徹底的にクオリティを上げたプレゼン資料によって、コンセプトに対して情緒的に賛同してもらう技。サービスを実際に使っているかのように見せる動画やアニメーションの制作といった、伝え方自体の体験設計である。
・井の中の蛙ブレイク
業務外のリソースを使い、自分やみんなが大海へ飛び出る道筋を作った。他部署の人に会いに行ったり、異業種交流会などのイベントに参加し、多い時には月に約200人に会った。その中で様々な職業・立場の人の情報や知見が集まっていった。さらに仲間を集めるために、複数コミュニティを運用し、メンバーの社内外への情報へのアクセスを容易にした。
縦割り・セクショナリズムを越境するスキル
・「叩かれ台」なので答えてください」作戦
新しい企画を提案する際は、提案資料の作成に多くの人を巻き込む。そうすることで、関わってくれた人たちが応援者になってくれる上、自分にはない視点を得られて企画がブラッシュアップされる。そのために使うのが、「叩かれ台なので答えてください」という言葉である。「意思決定して下さい」と言ってしまうと、「前例がないから決められない」と門前払いされてしまう。
スピード欠如を断ち切るスキル
・トライアングル壁打ち
提案前に3人の優秀な人物に相談することで、提案内容の方向性や議論のポイントが明確になる。その結果、成功確度が高まり、提案から実行までの期間も短く抑えることができる。新規事業の立ち上げにあたっては、「数字が読める人」「会社の方向性を決められる人」「資料づくりがうまい人」の3者が身近にいると安心である。
同質化・新陳代謝不全を防ぐスキル
・「全員スター化」と「演じ分け」
特定の派閥や人に肩入れせず幅広く役員やミドル層を巻き込んでいくために、社内賛同者を増やすキーパーソンとなるような人にスポットライトを当てる。本来、光が当たりにくいような人も戦略的に前面に出していくことによって、一体感が生まれる。
そして、チームの中で色んなポジションを演じていくことで、組織としての幅を広げていく。
挑戦・仮説検証不足を変革するスキル
・社内マーケティング
社内マーケティングとは「目的を達成し、成功が継続するために挑戦し続ける仕組みを社内で作ること」である。このために必要なのは、アイデアの素晴らしさや革新性の前に、社内の意思決定のメカニズムを理解した適切な社内コミュニケーションプランの策定である。キーマンを動かせなければ、打席に立つという意思決定をしてもらうこともできない。キーマンを巻き込んで継続して打席に立つには、次の心構えが必要である。
- 当事者意識を持ってもらうために、コミュニケーションの量を大事にする
- 上司を味方にするために、上司を経営者兼投資家として仮想化する
- 自分のアクション・振る舞いは、3C(Challenge、Clever、Charming)を大事にする