アパレル業界の不振
国内のアパレル業界がかつてない不振にあえいでいる。オンワード、ワールド、TSI、三陽商会という、業界を代表する大手アパレル4社の2015年度の合計売上高は約8000億円。2014年度の約8700億円から1割減少している。2016年度も引き続き1割程度減る見込みで、純利益も急降下する。
店舗の閉鎖やブランドの撤退も相次いでいる。2015〜2016年度に、大手4社が閉店を決めた店舗数は1600以上。ワールド、TSI、三陽商会は希望退職も募っており、その総数は1200人を上回った。その影響は、アパレルを主力商品としてきた百貨店にも及び、店舗閉鎖や売り場の縮小が続く。
アベノミクスが一定の成果を上げ、マクロ経済が比較的安定している中で、なぜアパレル業界だけが今になって突如、深刻な不振に見舞われているのか。
不良在庫を生み出し続けるアパレル業界
洋服を作り、それが消費者に届くまでの流れを「サプライチェーン」と呼ぶ。アパレル企業が直接、または商社やOEMメーカーなどを経由して工場に洋服を作るよう指示し、完成した洋服はアパレル企業が専門店に卸す、もしくは百貨店や直営店などを通じて消費者に販売するというのが流れだ。
川上から川下へと洋服が移動していく中で、必ず不良在庫が生まれる。工場がアパレル企業の需要を見込んで作った洋服が予想よりも売れずに余ったり、セールで売り切れなかったりした商品が不良在庫となる。作った商品が見込みほど売れず、不良在庫が発生してセールに回るのは他の業界でも珍しくない。アパレル業界が他と違うのは、大量の売れ残りを前提に価格を設定し、ムダな商品を作りすぎている点だ。アパレル市場は約20年で2/3に縮小している一方で、国内供給量は約2倍になっている。
アパレル業界が大量の「ムダな」商品を作るようになったきっかけは1990年代、バブルが崩壊して景気が悪化し、それまでDCブームに沸いていた市場が、一気に冷え込んだことが最大の転機だった。それまでは、どんなに高い値段を付けても、消費者はブランド名に引き付けられ、店の前に長蛇の列を作って洋服を買いに来た。しかし、そんな黄金時代は終わり、消費者の財布の紐は急に固くなった。