ミレニアル・スタートアップ

発刊
2021年10月27日
ページ数
208ページ
読了目安
212分
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推薦者

スタートアップの立ち上げ事例
住友商事を辞め、再生医療スタートアップを立ち上げた著者が、どのように起業を決意し、現在の事業に辿り着いたのか。著者の起業経験からの学びが書かれており、起業するために必要なことや、スタートアップの組織運営などが理解できます。

画一的な価値観の終焉

社会が1つのゴールに向かって画一的に成長していた高度経済成長期。そこでは、「豊かになる」もしくは「幸せになる」ことの定義が、国民みんな同じだった。つまり、豊かになるとはイコール、物質的に豊かになることだった。そのために仕事をしてお金を稼ぐ。みんなが同じ一本道を進んでいった。

 

しかし、今はもう違う。物質的な豊かさは飽和し、みんなが同じものを欲し、同じ目標を掲げる時代は完全に終わりを迎えた。物質的に満たされた日本では、それぞれが異なる成功の定義や異なる豊かさの定義を考える余裕が出てきた。むしろ何も持たないミニマリストのような考え方の方が主流になりつつもある。

 

ミレニアル・スタートアップの始め方

①幸せと成功を再定義する

自分なりの「幸せと成功」の定義を考えることは、人生で最も重要なことだ。重要なことであるにもかかわらず、多くの人がその定義を持っていない。自分なりの「幸せ」の定義がないことは、ゴールのない人生を歩んでいるのと同じ状況だ。

  • 自分は、どんな人生を幸せに感じるのか? 何があれば幸せなのか?
  • 自分は、どんな人生であれば成功だと考えるのか?

 

徹底的に掘り下げると、次の3つの自由を得られることが、幸せであり、成功の必要条件だと定義できた。

  1. 経済的自由:自分のやりたいことをある程度余裕を持ってできる暮らし
  2. 空間的自由:好きな時に好きな場所に行ける暮らし
  3. 人間関係の自由:尊敬できる仲間とだけ過ごすことが許される暮らし

 

これら3つの自由を手にするにはどうしたらいいか。思いつく限りの選択肢を紙に書き出し、この3つの条件を手に入れられる可能性が最も高い選択肢として残ったのが、一部のリスクを自分でもとる「起業」だった。

とは言え、リターンを顧みずにリスクをとるのはただの博打。最大のリスクと最大のリターンを天秤にかけ、そのリターンがリスクに見合うならば行動すればよい。

住友商事を退職して起業する最大のリスクとは何か。事業に失敗したとしても人生が終わるわけではない。再起可能な方法で起業する方法はいくらでもある。仮に事業に失敗したとしても、また会社に就職して、再起することは十分に可能だ。仮に給料が下がったとしても、暮らしに大差はない。それが最大のリスクだとすると、別に大した話ではない。

 

②ビジネスプランを考える

なぜ、セルソースという再生医療のビジネスを始めるに至ったか。

  • いかにして業務内容の着想を得たか
  • いかにして、それを実現するリソースを得たか

 

住友商事時代、ロシア木材ビジネスを担当していた。ロシア赴任する頃に、ロシアの木材輸出に関する法律が急に変わることとなった。事実上の原木の輸出禁止。ロシア国内で加工することで輸出すれば売ることができるというもので、ロシア極東に大型の加工工場を建設し、日本に輸出することとなった。
学んだことは、法律が変わる時には、新しい大きなビジネスチャンスが生まれるということ。そんな中で、2014年に、日本で新しい医療に関する法律ができるらしいという情報を耳にした。それが再生医療法だった。

時を同じくして、トライアスロン仲間として旧知の仲でもあった医師の山川雅之さんから、一緒に事業をしないかとの話もあり、真剣に再生医療法を読み込んだ。今後、拡大するであろう新しい産業がぼんやりと見えてきて、大きなチャンスだと確信した。

そこで、実際に現場にある課題を見つけ出すため、初対面の先生を含め、多くの医療関係者に直接ヒアリングをおこな、医療現場における課題や、これから再生医療に期待すること、保険診療の限界、財政赤字と医療費の関係性、これらのリアルな話をとにかく聞き、自分の頭で整理し、考えることに徹した。

 

どうやって、新しいビジネスの芽を見つけるか。それは、とにかく徹底的に世の中の課題を見つけることだ。あらゆるビジネスのベースは課題だ。世の中の未解決の課題を見つけ、その解決策を提供することが最もシンプルなビジネスの原則である。

人がなぜお金を払うのか。その理由は、提供するサービスに価値を感じることでしかない。つまり、その人にとって、何らかの課題が解決される時に、その価値に対してお金を払うのだ。この課題を見つけることが、成功するビジネスアイデアの起点になる。

 

あがってきた解決方法については、トライアルの段階で、特定した課題を本当に解決できているかどうか、PDCAをぐるぐると回して、検証・改善改良していく。大切なことは、最初から大きく始めないこと。最もシンプルでミニマムな形で、サービスを検証してみることだ。

まず最小限の方法でやってみて、反応や結果を見る。その繰り返しで、解決策の質を向上させ、最終的にたどり着く最高のソリューションが、はじめて真のサービスとなる。

そして、再び、自分たち自身に問う。このサービスを世の中に広めることが、社会にとって真に意味のある仕事なのか。この過程を経て生まれるビジネスだけが、世の中に残っていく。