人類、宇宙に住む: 実現への3つのステップ

発刊
2019年4月25日
ページ数
450ページ
読了目安
696分
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宇宙に移住するためのストーリー
人類はやがて生き延びるために宇宙に移住する必要がある。火星への移住から、その他の惑星への移住の可能性など、人類のこれからの未来を描いた一冊。

宇宙探査の黄金時代

かつては高すぎて国家予算の足かせになりそうだった宇宙旅行のコストが、次第に低下した。主に新進の企業家たちから流れ込む、エネルギーと資金と熱意のおかげである。イーロン・マスクやリチャード・ブランソン、ジェフ・ベゾスのような億万長者が小切手帳を開いて新たなロケットを建造している。

問題は、もはや米国が火星に宇宙飛行士を送るかどうかではなく、いつ送り込むかだ。惑星間旅行の可能なロケットと宇宙モジュールは現在、初期のテスト段階にある。これらは重量物を打ち上げ、宇宙飛行士を月や小惑星、火星、さらに遠くへと運ぶだろう。幅広い現代テクノロジーの革命的な進歩によって、我々の文明がいつか宇宙へ進出し、惑星をテラフォーミングして星々の間を飛び回る様が、今や予想できる。

テクノロジー革新の波

恒久的な月基地を建設し、火星に入植してそこをテラフォーミングするには、人工知能とナノテクノロジーとバイオテクノロジーからなる科学の第四の波を利用する必要がある。火星のテラフォーミングという目標は、現在の我々の能力を超えたものだが、22世紀のテクノロジーならば、この荒涼とした凍てつく砂漠をハビタブルな世界にできることだろう。自己複製するロボットや超強靭で軽いナノ素材、生物工学によって生み出されたバイオ作物によって、コストを大幅にカットしながら火星をまさしく楽園にすることが考えられるはずだ。やがては火星より先へ進み、小惑星や巨大ガス惑星である木星や土星が持つ衛星にも、コロニーを開拓する。

火星への入植

火星で生き延びるための1つの戦略は、氷など、手に入るものをうまく利用することである。火星は凍りついているので、1mほど掘れば永久凍土層に当たるだろう。氷を掘り出して解かし、精製して飲み水にしたり、呼吸に使える酸素や、暖房やロケット燃料に使える水素を取り出したりできる。また、放射せにゃ砂塵嵐から身を守るために、移住者は岩を掘って地下シェルターを作る必要があるかもしれない。

極寒の気候にも立ち向かい、常に凍死しないように頑張らないといけない。火星の気温は、滅多に水の氷点を超えないし、太陽が沈んだ後は摂氏マイナス127度まで一気に下がることもあるから、停電が命を脅かす恐れもある。たとえ、2030年までに火星への最初の有人ミッションが成功しても、こうした障害のために、十分な設備や物資を揃えて恒久的な前哨基地を作るのは2050年以降までかかるかもしれない。

火星に恒久的に居続けるためには、人の住めない環境にエデンの園を作る手立てを見つける必要がある。当初は物資を地球から運ばなければならないが、やがて惑星の素材を利用できるようになる。火星には酸化鉄があるため、建築に必要な鉄や鋼鉄を作ることができる。電気は、太陽光発電で生み出せる。大気中の二酸化炭素は、植物の栽培に使える。最終的にコロニーは、大気をゆっくり暖めて、赤い惑星に30億年ぶりに液体の水を流せる手立てを見つける必要がある。大気にメタンと水蒸気を注入し、人為的に温室効果を引き起こすといい。氷冠が溶けると、とらわれていた水蒸気と二酸化炭素が放出される。

火星周回軌道に衛星を送り込み、太陽光を集約して氷冠に当てることもできるかもしれない。この方式の場合、火星の太陽エネルギー衛星は、鏡やソーラーパネルが無数に並んだ、何kmもある巨大なシートを広げることになる。火星の氷冠がすべて解けたら、水深4m半から9mの海が惑星全体を覆うほどの液体の水ができると推定されている。

参考文献・紹介書籍