世の中には事実ではない情報がたくさん出まわっている
これから主流となっていくデタラメの大きな特徴は、数学と科学と統計を引き合いに出して厳密で正確なものであるように装うことだ。怪しげな主張を、数字、図、統計、画像データで箔付けしてもっともらしく仕立て上げる。情報に数値を絡めて、反論しにくい印象を巧妙に醸し出している。
スマホはデタラメを広めるための新しい道具になった。深刻さや思慮の深さといった要素は疎んじられ、軽さや楽しさがもてはやされるようになった。報道内容の偏りが目立つようになり、誤情報、偽情報、フェイクニュースが次から次へと押し寄せてくる。ソーシャルメディアは「誤情報」を簡単に拡散させてしまう。ソーシャルメディアのプラットフォームで誰よりも先に情報を発表すると、圧倒的に多くのアクセス数を獲得できる。だから一番乗りの競争を勝ち抜くために、ファクトチェックを省いてしまうことが珍しくない。
ソーシャルメディアでは「偽情報」もどんどん広まる。こちらは意図的に拡散させるデマだ。2018年に行われた調査では、アメリカのニュース記事の約2.6%は内容に誤りがあった。これはアメリカ人全員が1日1つの記事を読むとすれば、毎日ほぼ800万人が誤った記事を読むということだ。
オンラインの誤情報と偽情報から私たちが身を守る方法は、基本的に3通りある。
①技術の力で身を守る:テクノロジー企業は機械学習を活用して誤情報と偽情報を検知しようと取り組んでいる。
②政府による規制:フェイクニュースの作成や拡散を禁じる法律を承認した国は既にある。
③教育:教育を通じてメディアリテラシーと批判的思考を身につければ、誤情報と偽情報に振り回されずにすむ。
デタラメを見破る方法
身の回りにはデタラメがいくらでも転がっている。騙されないために重要なのは、注意を払うクセをつけることだ。とにかく注意を怠らない。それを習慣化する内に、誤った方向に誘導しようとする主張や分析を見抜く技が磨かれていく。
①情報源に疑問を持つ
ジャーナリストはどんな情報についても、次の問いかけをするように叩き込まれている。
- 誰が私にこれを伝えているのか?
- その人はどうやってそれを知ったのか?
- その人は私に何を売り込もうとしているのか?
②この比較は正しいのか
ランキングに意味があるのは、直接比較可能なものを比較している場合だけだ。
③うますぎる話、ひどすぎる話は疑う
圧倒的な力を持つソーシャルメディアでは、情報を書き換え、置き換え、再加工するのはたやすい。だからこそ情報源までたどる習慣をつけておくことが大切だ。ソーシャルメディアでは、とんでもなく極端な主張があっという間に拡散していく。そういう主張は、うますぎる話、あるいはひどすぎる話に当てはまることが少なくない。
④数字の桁は間違っていないか
嘘は入念に仕立て上げられているので、それなりに説得力がある。それに対してデタラメは底が浅い。自分の主張を正当化しようとして、とんでもなくデタラメな数字を使ってしまうので、おかしいとピンとくる。大したリサーチをしなくても論破できる。封筒の裏に走り書きするように概算を出すやり方「フェルミ推定」は、手っ取り早くデタラメを見破るには、かなり有効だ。
⑤確証バイアスにつかまるな
私たちは自分の信念を強めてくれる情報に注目し、信じ、共有しようとする傾向がある。日頃から抱いている思いを肯定する内容は、嘘かもしれないと疑うよりも、あっさりと信じてしまいがちだ。
⑥複数の仮説を考える
事実をデタラメな方法で伝えるというケースもある。ある現象についての解説が、必ずしも正しい説明であるとは限らないということを、まず頭に入れておくこと。大抵のパターンやトレンドは、説明を1つや2つ捻り出せるものだ。しかもデータと矛盾しない説明が成り立つ。だからこそ、すぐに信じてはいけない。説得力があるが正しくない説明に騙されないためには、自分なりにその出来事、トレンド、パターンについてあらゆる方向から点検して解釈してみること。