賢者の習慣

発刊
2021年7月23日
ページ数
224ページ
読了目安
202分
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推薦者

知的生活を送るための考え方
イギリスを代表する小説家アーノルド・ベネットによる自己啓発書。知的活力を養う方法や自分の強みを活かす方法、人生を心ゆくまで味わう秘訣など、日常の心構えについて書かれています。

意志の力こそが大切

人間の体は変調をきたしやすいが、鍛錬すればすぐに体調を保てるようになる。一方で、頭の調子を一定に保つというのは一層難しい。しかし、体調以上に鍛錬の効果は顕著に現れる。

毎日、1日は必ず24時間あり、そのうち仕事に使っているのは6〜7時間にすぎない。たるみ切った頭脳を徐々に活性化し、その「筋肉」に緊張を与え、素晴らしい知識と感激を我が物にしたいなら、知りたいと思う衝動と努力と方法がありさえすればいい。だが、それは実行に移すほど切実ではない。だから、相変わらず何もしないし、これからもしない。

 

人々がそうしないのは、知識欲がないためではない。それはまず第一に、意志の力がないためである。事を始めるための意志の力ではなく、継続して行おうとする意志の力がないためである。第二に、頭脳の諸器官が全くなおざりにしておかれたため、すっかり錆び付いて調子が悪くなっているためである。

従って、改善点は2点あることになる。意志の力を養うことと、頭脳の諸器官を良い調子に戻すことである。しかも、これらは並行して行われる必要がある。

 

知的活力を伸ばすためにまずやるべきこと

本当に重要なのは、方法ではなく、その方法を用いる際の心構えなのである。そして、適切なる心構えというのは、自分自身というものを様々な角度から注意深く考察し、認識することによってはじめて得られる。自分の気質の限界、自分が置かれている状況、そして、自分の過去から得た教訓などをまず最初に知らねばならない。

 

以前にも実行に移そうとしたが、失敗したことがあるはずだ。その失敗は、次の3つの原因の1つか2つによって生じたものである。

  1. 最初からあまりに多くのことをやろうとしすぎた
  2. 友人たちの皮肉たっぷりな嘲笑
  3. 毎日の生活を再調整しなかった

 

自己啓発をする際にあらかじめ備えておかなければならない最も重要な能力は、精神を集中させる能力である。何でも良いから1ページ読み、すぐに読んだことについて思い出せることをすべて書き記してみることも良い頭の体操となる。

頭を効率的に働かせるべく真剣に努力しようというのなら、ものを書く訓練というのは、是が非でもやらなければならないことの1つである。ものを書く技術は、どんな計画にとっても不可欠である。

 

頭脳の効率的な働きというのは、たえず思索に耽ることによって、はじめて得られる。やろうと決心した道を粘り強く突き進むことである。人はよく思索すればするほど、幸せになりやすい。

 

自分の人生に真正面から向き合って生きる

人は仕事に逃げ場を求めようとするが、人生に対する最大の罪は、人生から逃避しようとすることだ。もし、この罪を犯せば、唯一の本物の幸福を逃がしてしまう。この本物の幸福は、単なる快楽からも、また、満足感と諦観からも得られはしない。善悪の判断力は、悪い行いだけでなく、善い行いによっても麻痺してしまうことがあるということだ。

 

幸福の定義は、各々自分で考えなければならない。何であれ、自分のせいで、自分の能力が長い間使われずにいるとすれば、それは「満足の状態」とは言えない。満足の基本は、もてるすべての能力を存分に生かして使うことにある。
ところが、能力をくまなく活用することが、必ずしも幸福や富裕、安定に結びつくとは限らない。

幸福とは、まず「精一杯、ひたむきな努力をした後に得られる満足」を指す。誰しもミスをしたり、あるいは重大な過失を犯したりした経験はあるものだ。しかし、死ぬ間際になると、「私は馬鹿な真似をしてしまった」と認めざるを得ないとしても、みな、それでも結構幸せなのだ。

一方、もう二度とないような局面で、人生が突きつけてきた重大な挑戦に応じなかったと後悔しているならば、決して満足できないし、それゆえ幸福とは言えない。人生の最後になって、「お前は勇気がなかった。人生から逃げたのだ」という声を聞かなければならないと思えば、世間でいう意味で不幸な一生を送る方が、よほど「幸福」とも言える。