だれもわかってくれない あなたはなぜ誤解されるのか

発刊
2015年10月22日
ページ数
256ページ
読了目安
374分
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自分を正しく理解してもらうための仕組み
相手は自分が思っている通りには見てくれない。人がお互いを正しく認識することの難しさを心理学の視点から解説。どのようにすれば、自分を正しく理解してもらえるかについて紹介している一冊。

人は認識のエネルギーをケチる

人には必要だと思える事だけを考えて、それ以上は考えない傾向がある。人は用事を済ませるのに、できるだけ簡単で効率的な思考プロセスで済ませようとする。人があなたを意図した通りに理解してくれないのは、あなたが元々わかりにくい人だからだけではなく、相手が注意力をケチるからである。

認知の努力をケチる私達のお気に入りの手抜きツールは、ヒューリスティックと憶測である。ヒューリスティックというのは、例えば「すぐに思い浮かぶ事はより多く起こるように感じる」といった思考のパターンである。これは多くの場合は正しい結論を導くが、見当違いの方向に人を連れていく事もある。

憶測は、あなたを認識する人があなたのどこを見るか、その情報をどう解釈するか、その結果をどう記憶に残すかなどのプロセスに働きかけて、認識の重要な部分を形づくる。

 

人があなたを理解する事は驚くほど難しい

誰もがみな、無意識の内に2つの間違った思い込みによって行動している。

①他の人が自分を客観的に見てくれているという思い込み
②自分が自分自身を見るのと同じように、他の人も自分を見てくれているという思い込み

どちらの思い込みも間違っていて、その理由は2つ。

①人間は、自分で思うよりもずっと「読みにくい」存在である
自分がどれだけはっきり感じていても、あなたの感情は外からよく見えないし、顔の表情などはそれほど表現力がない。

②人の言葉や行動は、常に相手の解釈を経て意味を与えられる
言葉も行動もそれに意味を与えるためには「解釈」が必要になるので、人はあなたの事実に基づいて客観的には見てくれない。

 

認識を左右する憶測

人を判断する時には、たとえ初対面でも、その人を全くゼロから考え始める事はない。人は誰でもいくつかの思い込みを無意識に働かせている。

①確証バイアスと初頭効果
自分がそこに見出すだろうと予想しているものだけを見る。そして、最初にその人を観察して得た情報が、その後の情報を解釈したり記憶したりする時に影響を及ぼす。

②ステレオタイプ
ほとんどの状況において、人はあなたが属するグループのステレオタイプによって、あなたの行動や言葉を解釈する。

③ハロー効果
抜きん出た良い特質を1つ持った人を見ると、他にも良い特質を持っているに違いないと思い込む傾向がある。

④偽の合意効果
他の人も自分と同じように感じているはずだと思い込む。

大事なのは自分の今置かれている立場をしっかりと知る事である。中でも相手の思い込みは常に働いているので、それをきちんと理解する事が必要である。

 

他者を判断する二段階のプロセス

他者を認識する時には2段階のプロセスがある。

・フェーズ1
人はあなたの行動を目にした時、状況全体に注目するのではなく、パーソナリティ、能力、道徳性、特性など、あなたに関する何かと結び付けて考える。そして、自動的に簡単な推測を行う。

・フェーズ2
人は状況やその他の要素を考慮に入れ、あなたに関する最初の印象をそれに応じて修正する。従って一般的に「フェーズ2」の認識は「フェーズ1」よりもかなり正確なものになる。

相手に対する判断を修正するためには注意力とモチベーションが必要になるので、それらがない場合は「フェーズ1」で出した結論を持ち続ける事になる。ここ数十年の研究の結果、人間というものは「フェーズ2」にいく事は難しく、従って常に他者を個人として正確に理解する事はできないものだという事が明らかになっている。

相手と良いコミュニケーションを持ちたい時、あるいは良い印象を相手に与えたいと思う時には、「フェーズ1」の段階で適切なシグナルを発する努力が大事である。初めに正しい印象を与える方が、後で修正するよりもはるかに簡単で望ましいからである。

 

最初に与えた印象を変えるための方法

与えてしまったネガティブな印象を変えるのに、遅すぎるという事はない。相手に「フェーズ2」までいってもらうには、忍耐と努力と計画が必要である。

①圧倒的な量の証拠を示す
どんな認知的ケチでも無視できないほどに実証を積み上げる。

②相手が意見を修正したくなるようにしむける
人は一般的に、自分は公正で偏りがない人間だと考えたがる。そう考えた時、バイアスやステレオタイプも自然に自動的に大きく抑制される。相手に平等主義的目標を作動させるには、相手の「公正さ」「読みの鋭さ」などを褒める。