自分にとっての十分を知る
私たちの多くがあくせく働いて墓場を建てているのは、多いほど豊かという世にはびこる消費神話を信じ込まされているからである。私たちは、より多くのものとより大きな名声を手に入れ、周囲の人からより多くの尊敬を勝ち取りたいと思っている。自分自身や世の中により多くのものを期待することが習慣化している。
ところが、より多くのものを持てば持つほど、満足するどころか、さらに多くのものを求めるようになる。現状にますます不満を溜め込むのである。全てを手に入れようとあくせく働いたところで、満たされることはない。
多いほど豊かである場合、今持っているものでは十分ではない。たとえ多くのものを手に入れた後でも、もっと多ければもっと豊かという信念に突き動かされて行動してしまう。欲望は満たされることを知らない。
人生がうまくいく秘訣とは、最大の満足感をもたらす点を見極めることにある。満足度曲線の頂点で、私たちは十分に満たされる。生存のために十分な必需品。くつろぎや喜びのために十分な楽しいもの。そして少しばかりの贅沢品である。必要なものは全て手に入れている。十分とは安らぎの場所である。お金が人生にもたらすものに感謝し、十分に楽しみつつ、必要でないもの、欲しくないものには決してお金を使わない。自分にとって何が十分なのかがわかった時、満足度曲線は方向を変え、上昇に向かう。あとはそのまま生きるだけである。
豊かになれる9つのステップ
次の9つのステップは、お金との関わり方を根本から変え、経済的自立に到達する手助けとなる。その結果、最も貴重な資源である時間を自由に使えるようになる。そしてより幸せで、より自由で、より意味のある人生を送る余裕が生まれる。
①過去に折り合いをつける
これまでに蓄えてきたもの、稼いだもの、使ったものを全て把握し、いかに生命エネルギー(人生の時間を差し出して、手に入れるもの)を無駄にしてきたのかを見つめ直すことで、モノとの関わり方を見直す。
- これまでにいくら稼いだのか(初めての給与から最近の給与まで、全ての収入の合計)を把握する。
- 資産と負債からなる個人の貸借対照表を作成し、純資産を把握する。
②現状把握
生命エネルギー(お金)の使い道を調べる。
- 仕事をするために必要な時間とお金、両面でのコストを計算し、実質時給を計算する。
- 収入と支出を1セント単位で逐一把握する。
③毎月の支出表をつくる
生活の個性を映し出す支出カテゴリーを明らかにする。食料、住居、衣服、移動、医療といったカテゴリーの中に、支出の全体像を正確に映し出してくれる独自のサブカテゴリーを見つける。それぞれのカテゴリーで使った金額を生命エネルギー(時間)に換算する。
④人生を根本から変える3つの質問
それぞれの支出カテゴリーで使った金額について、次の3つの質問を自分に問うことで、お金の使い方を評価していく。
- 差し出した生命エネルギーに見合う充足感、満足感、価値を得たか?
- その生命エネルギーの使い方は自分の価値観や人生の目的と調和しているか?
- もしお金のために働く必要がなくなった時、このお金の使い方はどう変わるか?
質問の答えを「+」「-」「0」で記入して、「-」になったカテゴリーのリストを作り、見直す。
⑤生命エネルギーを可視化する
毎月の収入と支出を表すグラフを作成し、更新し続ける。できるだけ頻繁にそのグラフを目にするようにし、他の人にも見てもらう。
⑥生命エネルギーを大切にする(支出の最小化)
自分の生命エネルギーを大切にし、支出に対する意識を高く持つことで、月の支出総額を抑える。生活水準よりも生活の質を優先するようにする。
⑦生命エネルギーを大切にする(収入の最大化)
仕事に投じている生命エネルギーを大切にし、健康と価値観を守れる範囲で最も高い給与を稼げる仕事にエネルギーを差し出すことで、収入を増やしていく。
⑧資本とクロスオーバーポイント
毎月、資本の総額に次の公式を当てはめて、弾き出された数字をウォールチャートに記録する。
資本 × 現在の長期金利 ÷ 12ヶ月 = 月の投資収入
ウォールチャート上の投資収入のラインが支出のラインを突き抜けた時、経済的自立の領域に足を踏み入れることになる。投資収入のトレンドがはっきりし始めた際には、そのラインをクロスオーバーポイントまで延長させる。経済的自立に到達するまでに、残りどれくらいの期間、働かなければならないのかが概ね予測できる。
⑨経済的自立に到達した後の投資
経済的自立に到達した後の投資では、長期的にニーズを満たす、安定した収入を手にすることが重要になる。長期投資についての知識と教養を深め、自分の資金をしっかりと管理する。