今後30年間でほとんどの企業が変革を迫られる
過去30年間に繰り広げられたインターネット競争、プラットフォーム競争において、その影響を受けたのはインターネット企業に限られていた。しかし、今後の30年間はあらゆる機器がインターネットと接続され、すべての企業がインターネットのインフラ上で事業展開せざるを得なくなる。農業などの第1次産業も、製造業の第2次産業も、サービス業の第3次産業も、全てがそうである。今後の30年は、過去の30年を上回る変革が訪れる。
中でも劇的に変革を迫られる業界がいくつもある。GAFAを筆頭に、今後は米国発のプラットフォーマーがまるで「サイバー植民地」とでも言わんばかりに、日本や世界を席巻していくだろう。
日本企業が世界的プラットフォーマーになるのは構造的にはほぼ不可能である。GAFAに続いて「Netflix」や「Airbnb」「Uber」などが次々に日本に上陸し、ネットワーク効果を生かしながらシェアを奪っている。プラットフォーマーは「国境を越える」「1社独占」がその特徴ゆえ、すべてのデータを吸い上げてしまう。これらのプラットフォーマーとまともに戦って勝てる企業はほぼいない。
こうしたプラットフォーマーが直接影響を及ぼす業界、間接的に影響を及ぼす業界、ほぼ影響がない業界がある。
①直接大きな影響を受ける業態、業種
小売、流通、アパレル、自動車、金融、ヘルスケア、旅行、メディア、運輸、広告など
②間接的だが大きな影響を受ける業態、業種
エネルギー、製造業、ホテル、教育、エンターテインメント、人材など
③あまり影響を受けず、GAFAを有効活用すべき業態、業種
建設、農業、食品、外食、不動産、医療、化粧品、化学、介護など
GAFAの影響が比較的少ない業界であっても安心できない。現在の社会において、消費者はインターネットを利用する。すべての企業がネット企業に変わるわけではないが、多かれ少なかれ変革を迫られることにある。
すべてのコストがゼロに近づく社会が到来する
いつの時代も、テクノロジーの進化はコストを下げ、業界地図を塗り替えてきた。特にこれまでの産業革命では「エネルギー」「通信コミュニケーション」「モビリティー」の3分野で大きな変革が起きている。これから本格期を迎える第四次産業革命においてもこれらの領域では大きな変革が起きると予測される。
①エネルギー
化石燃料から再生可能な自然エネルギーに取って代わられていく。
②通信コミュニケーション
インターネットへのアクセスがPCやスマートフォンなどの一部の機器から解放され、あらゆるハードウェアから接続可能になり、同時に多種多様なデータを取得できるようになる。
③モビリティー
車がネットにつながる(Connected)、自動運転技術搭載(Autonomous)、ライドシェアやカーシェアといったシェアサービス(Shared)、電気自動車(Electric)、いわゆる「CASE」へと大きく変貌する。
デジタル化が進むと限界費用がゼロに近づく。デジタルなモノは複製や保管、転送コストといった追加コストがゼロに近い。モビリティー、通信コミュニケーション、エネルギーの3分野を中心に追加コストが限りなくゼロに近づく社会が到来すれば、社会や産業界に大きなインパクトを与える。
コストゼロ社会に向けて企業がすべきこと
あらゆる産業のコストゼロ化が進む「ゼロ・インパクト」、そしてコロナを機に浮上したトレンドを考えると、何も手を打たなければ、企業として存続が難しくなる時代が必ず訪れる。
情報収集を怠らず、デジタル産業革命でどのような未来へと変わろうとしているのか、事実をベースに予測する必要がある。これには1つ、いい方法がある。世界中では、次々と新たな起業家がベンチャーを興し、次なるイノベーションを起こそうと躍起になっている。
ベンチャーの存在意義は課題の解決である。つまり、世の中にある様々な課題が解決されていないからこそ、新たな挑戦に打って出ている。逆に考えれば、ベンチャーの動向をしっかりと押さえておくことで、どのような課題が解決されずに残されているのかを知ることができる。こうした事実をもとに、自社の置かれている状況を再認識し、次なる打ち手を考えればいい。
企業がまず着手しなければならないのは、トップのみならず、全社員のデジタルリテラシーを上げていくことである。社員のデジタルリテラシーが向上することは、人材価値そのものを向上させることに直結する。