事業はマネタイズから考えない
一般的な企業では「儲かるのか」「どこから収益を上げるのか」が事業を立ち上げる時の生命線と考えられている。しかし「儲かりそうなこと」からサービスを考えていると、できる事の枠が決まってしまう。収益ありきで考えると、どんどんアイデアも狭まってくる。「儲からなそうだけれど、ニーズがあるもの」の方が、事業のコンセプトとしては強くなる。儲からなそうな事業にはライバルも少ないので、トップバッターとして市場を切り開きやすいというメリットもある。
もちろん、利益を出さないと会社が回らないので方法は考えるが、事業の優先順位の1位が「お金」だと、良いサービスを生み出す事は難しい。最優先にしている事は「世の中に本当に必要な、意味のある事業か」、そして「自分が解決したい課題か」という2つに合致する事業を探り当て、小さな規模でも始めてみて反応を見た上で、マネタイズをどうするか考えればいい。
新しく事業を立ち上げる時に1番大切なこと
「ふるさと納税」という仕組みが生まれたのが2008年。起業した2012年当時、あまり浸透していなかったものの、自治体、地方の事業者・生産者、納税者にとってメリットの大きい制度だとわかった。これを多くの人が利用するようになれば、お金が地方に回り出す。「ふるさと納税」をもっと広めて、寄付をしやすくする仕組みを整える事は、社会に必要とされていると考えた。
当初はほとんど収益が上がらなかったが、悲観はしていなかった。「ふるさとチョイス」をオープンした直後から、自治体や事業者から「寄付が増えました」「注文が殺到しています」というお礼の声が次々に届き、「これは世の中に必要とされる事業だ」と確信していたからである。
「人が集まる場所」ができたら、そこからマネタイズをどうするか、知恵を絞っていけばいい。「ふるさとチョイス」では、自治体に寄付をする際の申し込みフォームのシステム利用料、自治体からの広告収入を得る事ができるようになった。一番大切なのは、その事業に意義があるかどうかである。
ふるさと納税ポータルサイトの始まり
起業した当時、「ICTを使って地域とシニアを元気にする」というコンセプトだけは決まっていたが、どんな事業をするのかは決まっていなかった。どうすれば日本の地方は元気になるのか、キーワードを挙げながらマインドマップを書いていった。2ヶ月後、メンバーの1人がマインドマップに書かれていた「ふるさと納税」という言葉を指して「これ何?」と言った。
そこで調べていく内に、いい制度なのに、ほとんど知られていないために、利用されていない事に気づいた。この情報をインターネットで広く発信して多くの人に知らせる事で、お金が地域に流れ、地域活性化の切り札になると考えた。
考え抜くステップ
なぜ「ふるさと納税」のNo1サイトを作る事ができたのか。それは「考え抜く」力を磨き続けてきたからである。考え抜くポイントは「視点を変えながら、自問自答を繰り返していく」こと。自分の考えた事を疑い、さらに深堀りし、いったん整理して、また疑う。その繰り返し。「もう考えは出尽くしたから、これ以上考えても意味がない」と諦めるのか、そこから一歩、さらに二歩と先へ進もうとするのか。両者が生み出す結果には雲泥の差が出る。新しいビジネスなどを考える時、次の3つのステップを踏む。
①広げる:ブレストしながら、マインドマップにアイデアを書き出す
②俯瞰する:全体を見て、視点を変えながら、キーワードをつなげたり、広げたりする
③検証する:絞り込んだアイデアを「5W1H」で深堀りする
鍵になるのは「木を見て森を見ず」になっていないかという視点である。細かいところにとらわれずに大局的な視点で見て企画の良し悪しを判断する。