SDGsに取り組むことが強みになる時代
現在、SDGsはビジネスセクターにおいて世界的な潮流となっており、ビジネスを通して社会や環境に良い影響を与えることが商売繁盛につながる時代が到来している。企業が社会や環境にとって良い影響を与えることを考えて商売をすると、売上や成長を高めることができる。なぜなら、今は十分に活用できていない世間からの信用や共感という財産をビジネスに最大限に生かすことができるからである。これらは会社が持つ最も強力な武器である。
お客さんや取引先は、安くて良いものだという理由だけで、会社や商品を選ぶわけではない。その背景には、会社がお客さんや世間に対して対価以上の価値を与えてきたことで、社会や市場の中に積み上げてきた信用や共感という土台がある。今の時代は、目に見えないこれらの財産こそが、企業にとっての競争優位性を高めている。それらを最大化する方法がSDGsに取り組むことである。
SDGsに取り組まないことに罰則も報告義務もないが、大企業ではほぼ100%がSDGsに取り組んでいる。それは、世界的なSDGsの潮流が自らの成長と生き残りの根幹に関わる市場環境の変化だと、多くの企業が感じているからである。お客さんや取引先が変わり始めており、環境や社会にとってのメリットが、経済的価値に加えて製品やサービスを買う際の判断基準として重視されるようになってきている。
取り組む課題を見つける
まずは既存に取り組んでいることを探すことから始め、次に解決すべき課題の特定またはつくりたい未来の構想を通して、自社にとって取り組むべき課題を発見する。
①既に取り組んでいることで感覚をつかむ
・SDGsへの貢献となっている自社の活動を見つける
・製品やサービスだけでなく、企業活動全体で考える
・間接的な効果までイメージを広げる
②解決すべき問題を見つける
・SDGsの目標を取り組む問題を表す言葉に変換する
・SDGsのゴールやターゲットではなく、それらの鍵となる要因に取り組む
③未来から解決すべき課題を逆算する
・SDGsが達成された世界を具体的にイメージする
・SDGsの示す未来への移行を実現させたり、加速させたりする課題を特定する
・移行に伴うチャンスとリスクを想定する
共通コストを減らす
会社としてSDGsに取り組む際は、新しいことを始めるよりも、今やっている無駄なことをやめることから手を付ける。
①社内のムダ、ムラ、ムリを減らす
・会社全体の視点を持ちながら、普段の仕事の中での電力、廃棄物、CO2、低い生産性などのムリムダムラを探し減らす
・原材料・購買物流、出荷製造、物流、販売・マーケティング、サービスや管理業務それぞれにおいて工程を見直す
②社外との取引を見直す
・社内の取り組みだけでは減らせない共通コストは、社外との取引を見直す
・「エシカル消費」で購入する、再生可能エネルギーに切り替える、出張の宿泊を「LOHAS」にするなど
・取引先や地域、業界の取り組みを支援する
③共通コストゼロを達成する
・CO2、ゴミ、有害物、残業など、自社の得意分野を選び、その中で共通コストをゼロにする
・社会全体で資源を循環させるという広い視点を持つ
・循環経済の実現を目指し、3R(削減、再利用、リサイクル)を促進する
共通価値を生み出す
「商品・サービス」「バリューチェーン」「クラスター」の3つを活用して、共通価値を生み出す。
①商品やサービスで共通価値を生み出す
・今の商品や市場を変えることから考える
・社会価値の視点で自社のビジネスを再定義する
・今ある商品に社会価値を加える
②バリューチェーンで共通価値を生み出す
・自社のバリューチェーンの各工程の中で、社会価値を高められるものに優先順位を付ける
・重要度の高いものだけを選び出し、正の影響は最大化、負の影響は最小化する取り組みをする
・GRI(Global Reporting Initiative)の基準における評価項目で自社の活動をチェックする
・社会価値を提供するステークホルダーを認識する
③地域や業界全体(クラスター)で共通価値を生み出す
・自社が属するクラスターを使って共通価値を生み出す
・自治体によるSDGsクラスターを活用する