物語戦略

発刊
2016年4月7日
ページ数
216ページ
読了目安
227分
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顧客の心をつかむストーリーの見つけ方
近大マグロ、タニタの社員食堂など、独自の競争優位を築いている企業には、優れたストーリーがある。自社の経営資源の中から、顧客の心をつかむストーリーを見つけ出し、戦略に合致させるための方法論。

優れた企業は物語を持っている

物語というのは、従来とは異なる「ものの見え方」を提供してくれる。見慣れたものが「他とは違う」価値を持つように思えてくる。それが物語の力である。市場で独自の地位を築いている企業は、こういった物語を持っている。

・ルイ・ヴィトン
タイタニックの乗客の荷物の中にあったルイ・ヴィトンのトランクは沈まず、それにつかまって助かった乗客がいた。

・ボルボ
3点式シートベルトを発明し、安全な社会のために特許を無償提供した。

・パタゴニア
勤務時間中であっても社員はサーフィンに行くことが許されている。

 

シンボリック・ストーリーとは

企業の強みを象徴する物語を「シンボリック・ストーリー」という。これは企業が既に持つ強みに基づくもので、それらを発信することで、その企業が「他社とは違う」存在であることを強調する機能を果たす。

その企業の強みに、独自の物語が加わり、人々の共感を得ることができれば、他社との決定的な差別化要因になる。重要なことは、これらの物語が、企業が取る戦略の方向性に合致していることである。シンボリック・ストーリーの要件は次の3つ。

①企業の強みを象徴している
②企業の戦略方針に合致している
③思わず人に話したくなる

 

物語が競争優位をもたらす

物語戦略では、シンボリック・ストーリーという物語を「経営資源」として位置づける。つまり「伝わる強みこそが、ビジネスモデルにおける強みになりうる」と考える。情報化社会においては、戦略の優劣だけでなく、コミュニケーションという武器を使いこなせる企業が優位性を手に入れられる。

・『近大マグロ』→ 実学教育に強い近畿大学
・『タニタの社員食堂』 → 肥満を改善するタニタ

 

物語戦略づくり3つのステップ

①物語を見つけ出す
探索するには「自社の培ってきた歴史から抽出する」「会社の各機能から導出する」「社外の関係者から聞き出す」という3つのアプローチがある。

ここで間違えやすいには「いい話」=「シンボリック・ストーリー」ではないということ。送り手と受け手がウィンウィンになる物語かどうかが重要である。

②力をテストする
候補となる物語には、VRIOを当てはめることで、競争優位につながるかどうかを検証できる。「Value(経済価値)」「Rarity(希少性)」「Inimitability(模倣困難性)」「Organization(組織的活用)」。

③ビジネスモデルとつなぐ
物語とビジネスモデルを適合させるには、次の3つを繰り返す。

1.戦略要素の筋を通す
2.物語を埋め込む
3.戦略オプションを考える

 

物語を探すポイント

シンボリック・ストーリーを見つけるということは「これまでと全く異なるものを新たに創出する」ということではない。既存のマーク、聞き慣れた話、当たり前と思っていた技術や組織など、会社には物語がたくさん埋まっている。それらの事実をもう一度見直し、資源としての価値を掘り起こせばいい。シンボリック・ストーリーを探すには、物語を3つのタイプに分類してみる。

①人的資源タイプ:創業者、技術者、顧客
②物的資源タイプ:商品、技術、サービス
③組織資源タイプ:業務プロセス、オペレーション、技術革新力

これらにまつわる物語の中から、経営資源となるものを選別し、新しいビジネスモデルを生み出したりすることはできないか判断する。