アップトレンドを考えて、黎明期に飛び込む
新しく何かを形づくろうとする人を「Shaper」と呼ぶ。これは起業家やクリエイターに限らず、何かしらを生み出そうとする創造性をもった働き方をする人たちを表す言葉として使っている。特に日本社会において近年、創造性を発揮する生き方やキャリアが重要になってきている。この価値はこれからも右肩上がり高まり続ける。
就職活動に励む学生の多くが、まず自己分析を一生懸命やろうとし、次に業界や企業の分析をしようとする。しかし、それらの前にまず産業の歴史から掘り下げて社会分析をすることが大事である。戦後の産業史がどうなっていて、今の産業構造がどうやって成り立っているのか。未来はどうなっていきそうなのか。これを時間軸で捉えていく「時間軸思考」がキャリアを考える上で非常に大事である。
産業史を捉えた俯瞰的な思考をすれば、どの産業にダウントレンドが働いているのかが長期視点でわかるようになる。さらにアップトレンドのテーマやトレンドを予測し、そこに順張りすることも可能になる。例えば、「伝統的な日本企業の固定化された雇用慣行からの脱却」というテーマは、長期で見れば間違いなくアップトレンドであり続ける。また、「産業のデジタル化」というテーマも、長期で見た時に間違いなく大きく進行するアップトレンドであり続ける。
あらゆる領域・分野において黎明期や成長初期フェーズに飛び込み、若いうちに会社を大きくする経験をしている人が、後に起業家・経営者として活躍しているケースが実は多い。すでに誰かが大きくした後の成熟した会社に後追いで入るのではなく、「今で言えば、その黎明期にあたるところはどこだろう?」と時間軸補正して考えられる思考力を持つことが大事である。
「迷ったら多くの人が選ばない方を選ぶ」こと。「迷っている」ということは、別の言い方をすると「甲乙つけがたい」とも言える。それなら、多くの人が選ばない方を選んだ方がチャンスは大きいのではないか。普通だと選ばない方を選ぶと、その時点で「話のネタ」になる。面白いと言ってもらえる可能性が生まれる。
若くして普通ではあり得ないポジションに就いたり、普通ではあり得ない資産形成ができていたりする経営者や起業家の多くが、同じような経験について話している。就職先・転職先として複数候補で迷った時に「最も小さいところを選んだ。なぜなら、自分が生み出す影響が相対的に最も大きいと思ったから」といった発言である。これは成功する人、特に新しいものをつくりあげるShaperたちに共通して見られるマインドセットである。
どのような人が活躍するのか
経営者の目線で考えれば、この人を採用したら会社がどう良くなり、どう大きくなっていくのかという期待値が大きい人の方が、価値が高い。有名な大企業にいたからといって、役に立つとは限らない。自分が在籍していた会社で何をつくりあげてきたのか、その人のおかげで生まれた差分は何なのかが大事である。
自分の本質的な価値は、周りの人たちへの波及効果や、周りの人たちが成果を挙げられる仕組みをどれだけつくったかで決まる。利己的な思考をしていては、組織に大きな差分をもたらすことは不可能である。成長意欲が高い人は一見優秀に思えるが、実は自分がとにかく成果を挙げよう、自分の能力を高めようという意識の人よりも、周りに貢献する意識が高い人の方が優秀ということになる。
頑張って活躍したい、成長したいという意識を持っている人の中には、良い成長環境を与えてくれそうな会社を選ぼうとする人が少なくない。会社が自分を成長させてくれると考えているかのようである。しかし、そのような受け身な姿勢では、会社に大きな差分はもたらせない。会社にすでにあるノウハウを教えてもらって学んでも、それは会社の組織的能力を拡張している訳ではないからである。
結局のところ、「必要な勉強は自分でするので、大きな仕事をください」と言える人がチャンスを掴む。そういう人は経験を積んでどんどん成長し、さらに大きな仕事をするようになる。