経済ニュースが簡単に理解できる まるっと経済学

発刊
2019年11月8日
ページ数
208ページ
読了目安
199分
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わかりやすい経済の教科書
小説形式で簡単に経済がわかる一冊。日本の財政、アフリカの発展、SDGsを主なテーマとしています。

国民1人当たり800万円の借金

日本の2018年3月末の貸借対照表を見ると、負債を表示する右側の欄に「負債合計」1239兆円とある。この内、公債など国の借金とされるものは、1100兆円ある。これは国民1人当たり800万円以上の借金を負っていることになる。国の負債のバランスを見る場合、国の経済規模であるGDPとの比率を用いる。日本のGDPは536兆円、負債1239兆円であるためGDPに対する負債比率は230%を超える。これは世界一の数字である。

負債の多くは国債である。国が発行する債券で、金融機関や個人が購入する。国は一定期間利息を払わなければならず、償還期限が来ると購入者に返済する。地方公共団体が発行する地方債などと合わせて公債ともいう。

国の負債対GDP比率ランキング2位のギリシャは、負債対GDP比率は179%だが、GDPが22兆円と小さいため、負債額は40兆円ほどである。

負債は増える一方

日本は1239兆円の負債だけがあるわけではなく、資産が671兆円ある。これを全部売却すれば負債は568兆円まで減るので、純負債とGDPとの比率は100%近くまで減少する。また、政府や自治体は公共インフラなど財務数値に出てこない莫大な資産を有しており、ほとんどが過小評価されているという指摘もある。

しかし日本は少子高齢化により年金支払や医療費などの社会保障費の負担が重くのしかかり、財政赤字が続くだろうと考えられている。財政赤字を終わらせない限り、負債は増える一方となる。このためOECDは、日本が持続可能な財政を確保するには、消費税20〜26%まで引き上げなければならないと提言している。

国債の保有46%は日銀

赤字国債の最大の欠点は、世代間格差である。財政赤字を国債などの借り入れで賄うことによって得をするのは、その時年金を受け取る年代である。ところがこの国債を返済する時の財源となるのは、返済時の税収であり、それを払うのは返済時の現役世代である。

日本の国債の保有者は、日本銀行46%とほぼ半分を占める。銀行、生命保険などの一般の金融機関を含めると8割を超える。海外の購入者はおよそ7%にすぎない。つまり、内輪で借りているにすぎないと言える。日銀が保有する国債476兆円だけで、対GDP負債比率は80%を超える。この数字は世界の中央銀行が保有する国債の対GDP比率としては群を抜いている。

国の借金は増えても問題ないのか

自国通貨を発行する国であれば、高インフレの懸念がない限り、借金が増えても問題ないという現代貨幣理論(MMT)がアメリカを中心に勢いを増している。日本やアメリカのような自国の通貨を発行できる国は、いくらでも通貨を発行できるため、自国通貨建てで国債を発行している限り財政赤字は問題にならないという理論である。国の借金が対GDP比率で200%を超えている日本が、未だに財政破綻していないことも、1つの裏付けになっている。

日本はその国債を中央銀行がたくさん購入している点でも珍しい国である。日本の法律では、通貨を発行している日本銀行が、国から直接国債を購入することは禁止されている。これは、中央銀行が国債の引き受けによって政府への資金供与を始めてしまうと、通貨の増発に歯止めがかからなくなることで、悪性のインフレを引き起こす恐れがあるためである。しかし、金利調整など、金融市場の調整のために、市場から国債を購入することは認められている。日銀は2018年に「長期金利について、10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う」としており、買入れ額については、弾力的な買入れを実施するとしている。