人生のダイヤモンドは足元に埋まっている

発刊
2021年1月14日
ページ数
240ページ
読了目安
276分
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推薦者

人生で本当に大切なこと
世界最大級の投資運用会社を設立し、金融の世界で成功した著者が、行き過ぎた資本主義社会に警鐘を鳴らし、人生で本当に大切なものは何かを説いている一冊。

強欲資本主義による偽りの宝

投資銀行を筆頭に、銀行業界全体が、資金に過度のレバレッジをかけて過度の投機に走る背景にあるのは資本主義の行き過ぎだ。巨大ヘッジファンドのCEOたちが手にする数十億ドルもの年収や、上場企業の経営者が受け取る「いかがわしい」としか言いようのない報酬については言うまでもない。

強欲主義が蔓延して、金融システムと企業社会の行く手を脅かしている。その弊害は金銭の問題にとどまらない。「足る」という感覚が失われると、「職業人」としての価値観が堕落する。投資のための資金を委託された「受託者」であるべき人間が、ただの「セールスマン」になり下がる。そして、「信頼」の上に築かれるべきシステムが、「計算」に基づくシステムに変わってしまう。

「足る」という感覚がおかしくなると、人生そのものを見誤る。「成功」という名の偽物のウサギを追いかけ、長い目で見れば、まるで意味のない、一時的な価値を崇めるようになる。そして、「計算」を超えたところにある不変の価値を大切にしなくなる。

 

現在の金融システムでは、市場から得られるリターンばかりに期待が集中しているが、金融システムによって奪われる過大なコストや、莫大な投機取引にかかる過剰な税金、本来の目的を逸脱した財政支出から生じるインフレには、まるで目が向けられていない。これらのすべてが、市場から得られるリターンに大損害を与えている。投資家は愚かな短期的投機に明け暮れ、賢明な長期的投資を避けてきた。シンプルなものから生まれる本物のダイヤモンドには目を向けず、代わりに複雑なものからつくり出された模造ダイヤを追い求めている。

ビジネスの世界では、計算できるものを重視するあまり、信頼し、信頼されるということを大切にしなくなった。もしこれがまったく逆になれば、職業というものの根底にある価値観を大切にしながらビジネスを行うことが可能になる。さらに、これまで多くの企業が、それぞれの分野での価値観を放棄してきたが、それを取り戻せるようにしなくてはならない。

 

人は生きていく上で、真実よりも勝利することが大切だという幻想にとらわれやすい。形あるモノにばかり目を奪われ、モノに意味を与える無形の価値にはあまり目を向けていない。成功ばかり目を奪われ、人格をないがしろにしている。そして個人の満足ばかりを追求する一方で、職業は天から授かった使命であり、働くということは自分自身やコミュニティや社会への奉仕であるという考え方を失ってしまった。

 

成功の本当の意味

豊かさ、名誉、力が成功の三大要素であるのは事実だ。しかし、金銭だけで「豊かさ」を測ることや、世の中から向けられる敬意だけで「名誉」を測ることや、他人を支配できる権力だけで「力」を測ることは誤りだ。金銭的な富というのは、成功の上っ面だけを測るものさしにすぎない。金銭で測ろうとするなら、この社会では「万人の尺度はカネである」ということになる。これ以上に愚かなことなどない。

 

成功は金銭的な尺度や、他人に対して行使できる力の大きさや、つかの間の世間の注目という幻の名誉だけで測ることはできない。しかし、より良い世界を築くために貢献しているか、他の人々を助けているか、愛情を持ったよき市民となる子供を育てているか、というものさしで測ることはできる。つまり成功とは、自分のために何をなすかではなく、社会のためにどんな貢献をするかによって測られるべきものだ。