不平等な社会は容認されるべきなのか
アメリカは今、テクノロジーが空前の進歩を遂げている。一方で、かつてないほど不平等な社会になりつつある。富裕層1%の資産が世界の富に占める割合が増えると同時に、高学歴の人と単純労働者の所得格差が広がっている。
有識者の中には「不平等はイノベーションのために払わなければならない代償だ」と主張する人たちがいる。社会をもっと平等にするために最高税率を上げたら、リスクを伴うイノベーションが阻害されると言う。しかし、平等と成長がトレードオフの関係にあるという考え方は間違っている。社会がイノベーションと平等の両方を推進する方法はたくさんある。
そもそもイノベーションはすべての人を豊かにすることはない。現実的には「敗者のいない」イノベーションはほとんどない。1世紀前に製鋼所が鍛冶屋の仕事を奪ったように、今、スーパーのセルフレジがレジ係に取って代わっている。ほとんどの発明は社会全体の幸福度を上げる一方で、必ず貧しくなる人を生み出すものである。イノベーションの多くは不平等をもたらし、成果は不平等に分配されることになる。
イノベーションは不平等を生み出す
インターネットビジネスの問題の1つが、一番優れた企業に顧客が集中し、報酬が膨大になることである。市場集中が進行すればするほど、労働者にわたる収入割合が減少することが発見されている。現在、多くの業種が「勝者が一番多く取る」になりつつある。そのため、今後労働分配率はさらに低下することになるだろう。
企業買収も、巨大プレーヤーを生む要因の1つだ。巨大ハイテク企業がライバルになりそうな企業をすぐに買収する。その結果、寡占化が一層進むことになる。
過去数十年間で、フロンティア企業とラガード企業の格差が拡大し、巨大ハイテク企業がフロンティア企業の大半を占めるようになった。また多くの業種で集中が進んだ。一般的に企業のオーナーは顧客よりも裕福になる傾向があるため、高い利益と高い価格が結びつくことで不平等が拡大した。一方で、市場集中のために、従業員に分配される利益が圧縮された。
こうした流れにテクノロジーは、プラットフォームプロバイダーによるデータの独占から、インデックスファンドによる経営の支配に至るまで、目に見えない形で影響を与えている。
不平等を縮小させるためのアイデア
不確実性とは、正確な確率がわからない状態のことを言う。私たちは未来のテクノロジーの変化と影響に関して予測できない。この解決不能な不確実性が存在する時には、特定の分野や状況における価値という観点ではなく、不確実性に対する保険としての価値という観点から対策を考えることが重要である。
イノベーションによる影響についても、保険と同じで、不確実性に直面した場合は、政府が保険を提供すべきである。もっと多くのイノベーションを起こし、人々をもっと平等にするために、保険アプローチを役立てるべきである。
①教員の能力向上を教育の最優先課題にする
②職業訓練の質を大幅に向上させる
③学生ローンの手続きを簡略化する
④MOOC(大規模公開オンライン講座)の利用を奨励する
⑤競業禁止条項を排除する
⑥業務独占資格を制限する
⑦新たな雇用のカテゴリー「インディペンデントワーカー」を作る
⑧EITC(給付付き勤労所得税額控除)を増額する
⑨テクノロジーを活用することで、仕事をもっと家庭に優しいものにする
⑩福利厚生、税金、雇用に関する法律を改正して、働く女性に対する偏見を取り除く