投資される経営 売買(うりかい)される経営

発刊
2016年6月25日
ページ数
264ページ
読了目安
339分
推薦ポイント 10P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

持続的価値を生み出し投資家から評価される企業の条件とは何か
長期間にわたり株式を保有し続けてパフォーマンスを上げる投資家は、企業の何を見ているのか。投資家の思考を解説し、投資家から評価される会社の条件とは何かを紹介している一冊。

長期投資家は「相対比較」しない

長期投資家は「どの会社を買うべきか」を突き詰めて考える。投資業では買った後に価値を足せることはほとんどない。そのため、その会社は長期間にわたって本当に強みを持ち続けられる会社なのかを十分に見極める。

「何を買うか」と同じくらい大事な点が「いくらで買うか」である。その会社の本来の価値に比べて、割安な価格で買わないと元も子もない。多くの投資家は、株価収益率(PER)や株価純資産倍率(PBR)、配当利回りといった指標を使い、過去の株価や同業他社の株価との比較を頻繁に行っている。しかし、この考え方では、世の中の流れや業種の人気度が変わると、割安・割高の判断も大きく変わってしまう。長期投資家は「相対価格」は気にしない。それどころか業績すらあまり気にしない。

 

長期投資家は「絶対価値」を見極める

「付加価値の薄い」投資家が高い長期パフォーマンスを出せるとしたら「周りに背を向けた行動をとる」しかない。株式市場はリーマンショックやギリシヤショックのように、時としてパニック状況に陥ることがある。パニック相場に陥った市場は長期投資家からすると、素晴らしい価値を持った会社が、とてつもなく安く買えるチャンスである。良い会社を安く買える時期こそが投資家の真価を問われる時期である。

周りに背を向けるには、何か「相当しっかりした拠り所」を持っていなければならない。この拠り所が「企業の絶対価値」という考え方である。長期投資家は、会社には「絶対価値」があると考えている。株価は1日で5〜10%も動くことがあるが、会社の本来的価値は頻繁に変わらない。長期投資を行うためには、この会社の本来的価値を見極めることが重要である。

 

長期投資家は「超過利潤」を生み出す強みに着目する

長期投資家は、ゼロからその事業を作り直すとしたら、いくら必要になるかを見積もった「再調達価格」を算定する。そして、これを上回る収益「超過利潤」を生み出せているかを見る。企業の中には、超過利潤を出し続ける会社がある。このような会社には、単に競合と比較して何かに秀でているというだけでなく、「障壁」と呼べるような高い水準の強みを持っている。この「競合障壁」という考え方を長期投資家は重視している。

 

持続的に価値が上がり続ける会社とは

持続的に企業価値が向上するメカニズムは『みさきの公理』によって定義される。みさきの公理では企業価値は3つの因子で決まると考える。

企業価値 =(事業×人)×^ 経営

①事業に障壁がなければ、持続的に価値が上がるはずがない
今現在、優位性や収益性が高いからといって長期投資しても良いというわけではない。その優位性が圧倒的な「障壁」になっている、ごく少数の企業を選んで投資しなければならない。そのためには以下の5つの切り口がある。

・リソース:特定の企業しか持っていない独特の資源があるか
・規模:規模がもたらすコスト優位があるか
・スイッチングコスト:他のサービスに切り替えるのが大変か
・習慣化:日常的に習慣化されているサービスか
・サーチコスト:代替品を探すのが大変なものか

②人が優れていなければ、価値は持続的に上がらない
優れた人を持っている会社は、たとえ一時的な業績不振に見舞われても必ず挽回してくる。

・経営者に「知的貪欲さ」「オープンマインド」「公の意識」があるか
・経営層に厚みがあるか
・企業文化は健全か

③経営の改善なくして、持続的に価値は上がらない
会社が有する強みには通常、一定の寿命がある。そのために経営スキルや手法、経営戦略が大切である。

 

投資家の考え方

事業の付加価値の厚みは典型的に「粗利率」に現れる。投資業界でこの粗利率を考えると、どんなに優れた投資家でも毎年10%のリターンを確実に出し続けるのは困難である。上場株式への投資事業は、利の薄い経済性の中で営まれている。少人数で大きな金額を動かさないと儲からない商売だからこそレバレッジをかけなければ成り立たない。

「投資事業は付加価値が薄い」ということは「自分以外の何か」、つまり投資先企業への依存度が高いことになる。投資家の多くが短期の業績や株価に対して神経質に見えたり、保守的に見えたりするのは、すべてこの「依存度の高さ」に原因がある。短期投資家は短期の「業績」を類推することで依存度の高さを低減しようとし、デイトレーダーは「株価」の上下だけを追いかけることで会社への依存度を払拭してしまおうと考える。

一方、長期投資家は「どの会社を買うべきか」を突き詰めて考える。投資業では買った後に価値を足せることはほとんどない。そのため、その会社は長期間にわたって本当に強みを持ち続けられる会社なのかを十分に見極める。

参考文献・紹介書籍