答えから始めるのではなく問いから始める
カーネギーホール総監督兼芸術監督であるクライヴ・ギリンソンは、他者に彼を理解させようとする前に、他者の見方を理解するために、話すより一層多く聞こうとする。彼は、それが当然であれば称賛する。そこには自由が生まれ、仲間たちは一層安心とクリエイティビティを触発される。
彼はまた、すべての関係性において率直さを育てようとしている。率直さなしには、誠実な信頼は生まれない。オープンマインドの定義は、避けられない挑戦に直面する時、問題解決の構想が見つからない時、まだ見つかっていない違った方法をとることを邪魔されないことだ。
「人を、答えによってではなく、質問によって判断せよ」
ギリンソンはロンドン交響楽団(LSO)を経営した時代において、彼の人生で最も大切なことを学んだ。経営について何一つ知らずに、悲惨な財務状況に立ち向かう仕事に就いて、どのように対処するかはいうまでもなく、彼には問題が何なのかさえわからなかった。他の誰もがそうだった。できることは、事業をすべての角度から分析し、考えられるすべての疑問を出し、わかったことを基本として可能な限り最良の答えを出すことだった。問い続ければ答えが見つかる。誰もすべての答えを知ってはいないし、まず最初に問わなければ、答えを知ることはない。
リーダーシップとは、人々に対して、何をするかを言うことではない。リーダーシップとは、関わる人々すべての資源、スキル、経験と知識を利用することだ。結局のところ、チームメンバーは、特定のエリアについては自分よりよくわかっている。もし積極的に活用しないとしたら、それらを無駄にしているのであり、よって最良の答えを導き出すことは非常に困難になる。なぜなら、完全というものはあり得ないからだ。
多くのリーダーは、情報はパワーだと間違って考え、広いコミュニケーションを取ろうとしない。唯一の最高の決定を下す方法は、すべての人が関わり、可能な限りの情報を人々と共有することだ。開示性が習慣であらねばならない。ただ1つのパワーとは、正しいことがなされることだ。理想はすべての者が一緒に目的地に着くことであって、他者に対してどうしろ、と言うことではない。
情報を完全にオープンにし、チームに可能な限り広く関わらせるように、リーダーは勇気を持つ必要がある。それがベストアンサーを得る最良の方法だ。リスキーに聞こえるかもしれないが、リスクは稀にしかない。みんなが勝つことができるのだ。
ギリンソンが無秩序で、財政的危険性の高いLSOの経営を始めた時、ミュージシャンたちに仕えるオーケストラと言う基礎的考え方を変革し、まずは「何が音楽にとってベストか」という問いを提起しなければならないということは明確だった。結局、成功はついてくると直感的にわかっていた。音楽の質を第一義にできるのであれば、オーケストラは信念ある行動によって前進し、他はついてくる。最高の指揮者、ソロミュージシャン、演奏ツアー、レコーディング、テレビ出演、財政援助。
人に尽くすことを中心に据える
人々への献身は、ギリンソンの経営哲学の性格を特徴づけるものになっている。業務や任務、つまり組織を越えて、どのようにして最良の人々に尽くせるかは、個人的、組織的ニーズが優先する内向き視点の不安を取り除き、解放するものだ。
すべての価値あるシステムは、他者があなたにしてくれるであろうように、他者を扱うということが基本になっていなければならない。ギリンソンの場合、他者に貢献することへの重要性に対する信念のコアは、広範な読書とともに、彼が尊敬するようになった人々の途切れることなくひらめきを与える人間としての根本的な価値を主に伝記や自伝を通して知ることで、早い時期から発達した。