ものをつくるということ
いいなと感じて、つくりたいなと思って、どうなっているのかを分析して、自分でつくってみる。それがものをつくるということの基本であり、すべてである。まず自分がいいな、グッとくるなと感じることが出発点。好きだな、いいなと感じることは誰にでもあるはず。しかし、自分がいいと感じたものをつくりたいと思う衝動があるかないか。そこが大切なポイントである。感じるだけなら誰でもできる。でも、つくろうと思わない人は、そこで終わってしまう。大体の人はそういう人である。
音楽は正解のないものだとよく言われるが、その時々の正解を常に探し当てている。音楽を聴いていてグッとくるのはどこか、そして気持ちいいのはなぜか、感情を動かされる瞬間の秘密を突き止めたくなる。その疑問を掘り下げていけば、そこには必ず納得のいく答えが隠されている。
ただ、その答えは時代とともに変化していく。だから音楽をつくり続けるということは、答えを探す旅を続けるということでもある。
つくりたいと思うことで、いろんな構造が見えてくる。つくりたいと思う衝動だけが、いろんな発見に導いてくれる。とにかく自分の「好き」を分析すること。どうして自分はこれが好きなんだろうと。それを考えているうちに、答えは見えてくる。
但し、どんなに自分が好きだと思うものでも、それを伝える上での理屈がないと、より多くの人には理解してもらえない。理論や理屈がないと自分も納得できないし、人を説得することもできない。
同じ曲を聴いても、人によって好きだと感じる部分も感じ方も違うはずだし、違っていていい。だからこそその理屈も、自分で見つけたものじゃないとダメである。自分の感性の上に自分の理屈を構築することが大切である。
曲を聴いた時に「いいな」と感じるところと、物足りなさや違和感を感じるところがある。それで当然のように物足りなさや違和感の原因を突き詰める。すると「もっとここをこうしたらいいんじゃない?」「ここを変えてみたらどう?」ということになったりする。もっといいものをつくりたいと思うと、おのずとそういう視点で見ることができるようになる。
目の前にあるもののすべてを受け入れてしまったら、それ以上のものはつくれない。このコップ持ちにくいなと思うから、人の手になじむコップがいつかつくられる。
新しい組み合わせを見つける
新しい音楽とは、つまり違うジャンルの音楽の組み合わせだったりする。だから音楽をつくることは、組み合わせの実験でもある。時代が変わればいろんな条件が変わって、その都度新しい組み合わせを世の中が必要とする。模索して、発見しなければならない。
意外なもの同士を組み合わせると、面白いものができる。そして、2つの距離が離れていればいるほど、面白いものができる確率が高くなる。誰もが想像できる2つのものが合わさるよりも、全く正反対の2つがくっついた方が、より多くの人を包み込める作品になる可能性がある。
新しいものは新しい組み合わせによってつくられる。だけどその組み合わせを発想することは、そんなに簡単なことではない。そのためにはいろんなことを知っていなくてはならない。引き出しは多ければ多いほどいい。
みんなが期待していること、予想できることをどれだけ裏切れるかが、感動を与えられる原点である。天才的な人というのは、意識しなくても物事を逆から見ることができる。普通の人は逆から見ることを心がけないと、面白い発想が出てこない。