コロナ危機を生き残る 飲食店の秘密

発刊
2020年9月19日
ページ数
205ページ
読了目安
196分
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繁盛店になるための店舗デザインとは
吉野家やかつやなど、多くの外食チェーン店の店舗デザインを手がける著者が、繁盛店になるために必要な店舗デザインの考え方をまとめた一冊。単なるカッコよさの追求ではなく、マーケティングや機能性まで考えた上で、店舗をデザインしなければ、コロナ時代には生き残れないと説いています。

繁盛店にするポイントは店全体のデザイン

人は店をパッと見た時、脳内で無意識に「この店に入ろう」というプラスの感情か、「この店はやめておこう」というマイナスの感情を抱く。プラス感情のレッテルを貼られた店は繁盛し、常連客が絶えない。

プラスとマイナスに分かれる決定的な違いは、店の「デザイン」にある。看板や外観、内装、客席、厨房、動線など、店全体の空間デザインに、繁盛店になるか否かを決定づける重要なポイントがある。しかし、そのことに気づいていない人が多いのが実情である。

 

デザインというと「見た目をカッコよくすること」と思われがちである。しかし、アフターコロナの時代は、単なるクールでカッコイイだけの店は生き残ることが困難。単に見た目のカッコよさだけでなく、マーケティングや機能性、コストパフォーマンスまで考慮した多角的なデザインが必要となる。

 

入りにくい店8つのポイント

「入りやすい店」は繁盛し、「入りにくい店」はつぶれる。次の中で当てはまるものが多いほど、「入りにくい店」である。これらのポイントを1つでも改善することで、繁盛店に生まれ変わる。

 

①看板を見ても何の店だかわからない

看板に店名しかないと、何を売っている店なのかがわからないので、お客様に避けられる。看板を見ただけで、どんな料理の店かがわかるデザインにすること。

 

②店内が暗くてよく見えない

店の中が暗くてよく見えないと、お客様は不安を覚える。店内の様子が外からもわかるような照明に変えること。

 

③店が奥まった場所にある

店が通りから少し入ったようなところにあると、どんな店かわからないのでお客様は警戒する。店のエントランスまでのアプローチに温かみのある照明をプラスして、安心感を与えること。

 

④入り口に2〜3段の段差がある

段差があると、それだけで店に入るのが面倒になる。入り口に目を引くディスプレイを施して、段差に目がいかない工夫をすること。

 

⑤間口が狭い

店の間口が狭いと窮屈な感じがして、中に入ることに抵抗感を覚える。入り口から店内が明るく見えるようにして、窮屈な印象を緩和すること。

 

⑥ドアが重い

ドアが重いと、店に拒絶されているような気持ちになる。重いドアはやめて、開放感のあるエントランスにすること。

 

⑦店の周囲が汚い

店の周囲に枯れ葉やゴミが落ちていると、店内まで不衛生な印象を与える。店頭だけでなく店の両隣のゴミもこまめに清掃すること。

 

⑧入り口に屋根がない

店の入り口に屋根がないと、雨や雪の日にお客様から敬遠される。入り口に雨よけの庇やテントをつけることで、雨の日も入りやすい印象になる。

 

固定概念を捨て、多角的に考えよ

人気のある繁盛店は「ダサカッコイイ」。マイナスの要素がプラスに転じると、その振れ幅の大きさに人は心を大きく動かされ、記憶に深く残る。人はギャップがある方が萌える。「ダサカッコイイ」ものは、単なる「カッコイイ」ものよりも多様性があるので、人の心を掴んで離さない魅力がある。

 

ビジネスパーソンには、必ずオンとオフがある。オンは仕事モード全開で気を張っている時間である。オフは仕事の合間や仕事終わりに気を抜いてリラックスする時間である。繁盛店は、オン・オフの切り替えスイッチになる存在である。オフになる快い瞬間に心を掴まれたお客様は必ずリピーターになるので、客足が途絶えない繁盛店に成長していく。

人をオフにいざなうには、隙のないクールな店より、隙のあるダサカッコイイ店の方がいい。人はふっと脱力できる安心感のある場所を本能的に求める。だから、そうした人の心理を意識した店舗デザインが必要である。

 

大切なのは単なる見た目のデザインや小手先のテクニックだけでなく、その根底にあるデザイン哲学を包摂したトータルなデザインの考え方である。流行りものを追いかけたり、古い価値観やノウハウにしがみついていては生き残れない。答えは決して1つではないので、柔軟かつ多角的な捉え方が必要である。