MMT〈現代貨幣理論〉とは何か 日本を救う反緊縮理論

発刊
2019年12月7日
ページ数
304ページ
読了目安
398分
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推薦者

日本は破綻することがないのか
自国通貨を自由に発行できる国家はいくらでも通貨を発行できるため、財政破綻しない。その根拠として、世界各国で話題となっているMMT(現代貨幣理論)の基本を説明している一冊。

批判されるMMT

MMT(Modern Monotary Theory)は、現代における貨幣の成り立ちを検討した上で、現実経済の動きや経済政策のあり方について分析を行う理論の呼び名であることから、「現代貨幣理論」と訳される。MMTは経済学における理論体系の1つだが、経済学の中では「非主流派」とされる一部の経済学者たちによって体系化が進められてきた比較的新しい理論であるため、これまで一般の話題に上がることはほとんどなかった。しかし、2019年に入り、欧米や日本をはじめとして、国際的に大きな話題となっている。

一方で、MMTは並み居る大物経済学者からは、「正統派経済学の教義から外れているだけでなく、政府債務の膨張やハイパーインフレなどの危険な結果をもたらしかねない、異端の誤った経済理論」だと批判されている。その批判の根底には、現代の資本主義経済を動かす重要な要素である「貨幣」に対する両者の見解の著しい違いがある。ケインズを出発点とするMMTの貨幣観と新古典派経済学を基礎とする主流経済学の貨幣観は、地動説と天動説ほど異なる。

納税手段としての貨幣が市場経済をつくる

主流経済学では、貨幣をモノやサービスの購入を可能にする「交換媒体(決済手段)」として定義している。一方、MMTでは貨幣を「信用取引(ツケ払い)」に用いられる「債務証書」こそが貨幣の起源とする。つまり、貨幣の起源を貸し借りの関係に求め、「貨幣=支払手段として用いられる債務証書」と捉える。

MMTは、人々が「国定貨幣」を日々の決済手段として用いるのは、国家が自らに対する支払手段としてその貨幣を「受け取ることを約束する」からであるとする。つまり、国定貨幣を差し出す見返りとして、国家に対する何らかの支払債務(税金や行政サービス手数料など)を消去できる法的な権利が保有者に与えられていることこそが、国定貨幣を貨幣たらしめる要因であるという。こうしたメカニズムを「租税が貨幣を動かす」と表現している。

政府は破綻しないが、インフレが政府支出の制約となる

MMTでは、預金を銀行の債務証書と捉える。銀行は貸出によって新たなマネーストックを生み出す。そして、マネーストックがマネタリーベースの発生要因となる。つまり、借入れその他の経済活動内部における資金需要に基づいてマネーストックは変動する。

MMTは、通貨や預金も含めた全ての負債は、国家の負債を頂点とする「負債ピラミッド」を形成しているという。それぞれの経済主体は自らの負債を履行するために、より上位に位置する主体の負債を利用する。そこには、貨幣としてより広く受け入れられる上位の負債で決済するという約束が、自らの負債発行を可能にするというメカニズムが存在する。

負債ピラミッドの頂点に位置する国家の負債は、他者の負債ではなく、自らの負債によってのみ返済されるという特徴がある。但し、国家が金本位制や固定為替相場制を採用して、自国通貨を金や外国通貨に交換する約束をしている場合には、国家の負債が頂点ではない。

日本、米国のような国々は、主権通貨制度を採用している。こうした前提の下では、国家の負債は際限なく、いくらでも発行することが可能になる。

国家にとっての貨幣制度の目的は、モノやサービスといった実物資源を政府部門に動員し、それを使って何らかの公共目的を達成することにある。そして、動員する際の支払手段として機能させるため、国定貨幣に対する需要を創造するのが租税の役割である。

仮に、人々の需要と比べて過剰に通貨が発行されるようになると、いくら価格を引き上げても売り手が増えず、単に物価の上昇、即ちインフレを加速させる。そうなると支払通貨額を増やしても政府によるモノやサービスの購入量は増えず、実物資源を政府部門に動員するという本来の目的が達成できなくなる。

主権通貨国であり、しかも対外収支の余力もある日本には、財政危機の問題は存在しない。