フィンテック1.0
日本では2015年頃からフィンテックという用語が頻繁に使用されるようになってきた。米国では日本より2〜3年早く注目され始め、次第に脚光を浴びるようになった。このフィンテックという用語で多くの人が意味したことは、単なるオンライン証券、オンライン銀行といった従来からある金融サービス業のネット化ということではなく、金融サービスの新たなソリューションの提供である。そうした動きの先陣を切ったのは米国のペイパルである。ペイパルにクレジットカード情報をあらかじめ登録しておけば、IDとパスワードを入力するだけでオンラインショッピングの決済が低コストで完了する。このサービスにより、ペイパルは、従来の支払いシステムに大きな風穴を開けた。
こうしたペイパルの動きに触発され、世界中で非金融分野のベンチャー企業が、支払システムだけでなくローンや資産管理、資金調達、送金、資金運用といった様々な金融分野で誕生していった。
フィンテック1.5
現在、ベンチャー企業の持つ単独技術が金融分野で応用されたり、何社かのベンチャー企業の持つ様々な要素技術が組み合わされることで、主としてフルラインの金融機関で使用されている。AI、ビッグデータやIoTに関する技術、ロボティクスといった要素技術が様々な金融サービス分野で効率的かつ効果的な金融商品を生み出すことになった。日本では2010年頃から、こうした技術が金融業において次第に利用され始めた。こうした動きをフィンテック1.0の進化系であるフィンテック1.5と呼んでいる。
フィンテック2.0
そしてフィンテック2.0と呼んでいる世界では、フィンテック1.5の世界とは次元が違うものとなる。1.0の世界ではWebを通して発達してきた。しかし、フィンテック2.0ではブロックチェーンが中核的技術となり、Webは必ずしも必要としない。Webは世界規模での情報交換を可能にした。他方、ブロックチェーンはインターネット上でグローバルでの価値の交換を可能にする。この二者は共存できるが異質なものと考えるべきである。
ブロックチェーンは、多くの人に分散型取引台帳と表現されている。構造的には、インターネット上に構築されたピア・ツー・ピアのネットワーク基盤としており、完全に分散化したクラウドシステムと言える。また、ブロックチェーンはデジタル資産の多種多様な取引を安全に処理できるプラットフォームとも言える。さらにブロックチェーンはデータベースの役割も果たす。ネットワーク参加者が「ブロック」と呼ばれる一種の保存場所で、取引履歴の記録を分散して保有管理している。
ブロックチェーンは誕生以来、多くのアプリケーションが創られるなど新しい進化をしている。中でも極めて重要なのがスマートコントラクトである。スマートコントラクトは当事者間の私的な契約をプログラム化し、ブロックチェーン上に載せ、これを自動的に執行する仕組みを意味する。このスマートコントラクトの出現により従来取引に付随していた膨大なコストと時間がかかる手作業が不要となった。
現時点では、ブロックチェーンは次のような金融サービス取引分野で有効に利用できる。「債権取引」「デリバティブ取引」「スワップ取引」「商品取引」「OTC市場」「レポ市場」「仮想通貨取引」。
多くの金融機関ではブロックチェーンの利用はコスト削減が目的となり、今後1〜2年内に広く活用される。最終フェーズでは、ブロックチェーンと仮想通貨の活用で、グローバルなリンクを世界の主要なパートナーと協業で構築していくことになる。