数字を追う世界からおりて、特定の人に呼ばれる存在になる
人生が100年時代になり、AIが仕事の半分を置き換えると言われる中、どうしたら生き残れる「何者か」になれるのか。ネットで誰もが高速学習できる今、「役に立つ」だけのスキルは競争過多になる。大事なことは「他の誰かではなく、あなたに仕事を頼みたい」という、誰かにとって意味がある存在になることである。
自分が誰かにとって「意味のある」存在になる、という積み重ねで、たくさんの人の「意味のある」存在となり、最終的に人は「何者か」になる。今は、お金の発明によって、交換相手を探さなくても必要な物を手に入れて生きることができるようになった。しかし、それによって誰かから「有り難う」と直接言われる機会を失い、誰かにとって「意味のある」存在になれる機会を減らしてしまった。
お金と同様に「いいね!」やフォロワーは数値に変換してしまうと、一人ひとりからの「有り難う」の意味が薄れ、いつの間にか、たくさんの「いいね!」やフォロワーが欲しいと数を追いかけるようになる。そうして、我々は「有り難うの意味」を忘れ、「数字のオバケ」に取り憑かれやすくなってしまう。
「数字のオバケ」に負けずに「自分の物差し」を育てるには、以下のことが大切である。
- 自分が誰かから「有り難う」と言ってもらえるGIVEを繰り返すこと
- ギブを繰り返すことで、特定の誰かにとっての「意味のある」存在になること
- 特定の誰かにとって「意味のある」存在になることを重ねていくこと
それによって、ある意味の流れの中で特定の人たちに呼ばれる「何者か(意味のある自分)」になっていく。これからの時代における働き方で大事なのは、「あなたは誰にとって意味のある存在ですか?」という問いであり、その答えを持てる存在になることである。だからこそ、人間関係をベースとした「あなたが好きだから一緒に仕事がしたい」というような信頼関係を築くことが、個人の働き方の主軸になっていく。
「ギブ」を仕事の基本にする
年齢や肩書に関係なく、グローバル規模で活躍する人たちは、ギブによって積み重ねた信頼の輪の中で、加速度的に成長している。
信用すると決めた相手には、日々細かなギブを重ねることで、相手の好みや今の状況を察知する。特に相手が何かアイデアを話してくれたら、それを素直に受け入れ、それについて知っていることを無条件にギブする。日頃から「こんな人を紹介するよ」とか「この本おすすめだよ」というように、相手の好みの視点に立ったギブをしあうことで、お互いへの信頼度がどんどん高まるので、いざ大きな仕事や機会が巡ってきた時に声をかけてくれる。
そもそも与える行為(ギブ)には、2種類ある。
- 自分の内側にある力で、人にありがたいと思われること
(自分の持っている知識や技能で「ありがとう」と言われること) - 相手の視点に立って、自分の外側にあるモノ(アイデア)に自分の思いを乗せてギブすること
(「あの人はきっとこれが必要だろうな」と考えて、それをギブすること)
ここで定義しているギブは、主に2つ目である。相手視点に立つギブは、相手から信頼を得られる上に、相手の視点が得られて発想が広がる。こうして、目の前の誰かにとっての「何者か」になることを、幾通りも繰り返すことによって、みんなにとっての何者かになれる。
そもそも自分の内側にあるもの、例えば特技や生まれながらに持った才能をギブできる人は稀である。ほとんどの人が、相手の視点に立って世の中を旅して、見つけて、自分の思いと掛け算して、相手に渡していくことをやり続けることで、相手にとっての何者かになる。