謙虚なコンサルティング――クライアントにとって「本当の支援」とは何か

発刊
2017年5月17日
ページ数
320ページ
読了目安
446分
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これからのコンサルタントに必要な姿勢とは
複雑さが増した今日、コンサルタントはどのようにクライアントの課題に臨むべきか。クライアントにとって本当の支援とは何かを考えるための一冊。

コンサルタントなのにどうしたらいいかわからない時代

私たちが解決しようとしているのは、かつてない複雑な問題と、かつてない種類のクライアント組織、そしてクライアントが感じているかつてない切迫感である。そのため新しいコンサルティング・モデル、すなわち「謙虚なコンサルティング」が必要になる。

私たちが支援を求められた時に、どうすれば良いかを理解するのが、一筋縄ではいかなくなっている。時には、クライアントに、複雑さを理解してもらい、手間暇のかかる診断と介入よりちょっとしたアダプティブ・ムーヴ(診断のためのインタビューや調査など)を講じた方が得策だと気づいてもらうことが、最良にして最も素早い支援になる場合もある。

クライアントと信頼関係を築く必要がある

確実に支援するためには、本当の問題、すなわちクライアントの懸念が何かを突き止め、その一方で「本当の問題」などなく、一連の不安が至るところにあるだけだという事実を受け容れる必要がある。クライアントの懸念を突き止めるためには、クライアントと支援者が信頼し合い、率直に話ができることが必要である。自分の懸念を打ち明けられるくらい、クライアントは十分に安心できなければならないのだ。

支援の場では仕事の域を出ないレベル1の関係が珍しくないが、互いを信頼して率直に話をするためには、そのレベルを超えた、個人的な話のできるレベル2の関係を築く必要がある。効果的なレベル2の関係を築くためには、初めて話をするまさにその瞬間から、「力になりたいという積極的な気持ち」と「好奇心」と「クライアントとその状況に対する思いやり」を態度で示すことによって、関係を打ち解けたものにする必要がある。

打ち解けた関係は、個人的なことに踏み込んだ質問をしたり、状況とそれについてのクライアントの気持ちとに共感的に耳を傾けたり、より個人的な考えや自然にわき起こる反応を伝えたりすることを通して生まれる。

レベル2の関係を築けたと実感できたら、何が問題なのか、支援が本当に必要なのはどこか、次にどんなことをすれば良さそうかを、支援者とクライアントは共同で進めるダイアローグの中で探ることになる。問題が単純明快だとわかったら、支援者は自ら専門家もしくは医者の役割を担うか、あるいはクライアントを他の専門家か医者に紹介するといい。しかし問題が複雑で厄介だとわかったら、クライアントと支援者は、「これによって問題が解決されるわけではないかもしれないが、次のアダプティブ・ムーヴへつながる新たな情報を得られる」ことを理解した上で、実行可能なアダプティブ・ムーヴを探すべきである。

そのため、コンサルタントは責務の1つとして、様々なアダプティブ・ムーヴの結果を理解し、そうした結果のポイントをクライアントにしっかり伝えて、クライアントがそのムーブを行う準備ができているかどうか判断する必要がある。

すべてに共通するのは、それらが役に立ちたいという積極的な気持ちと、好奇心と、思いやりから生まれるものであることだ。そして、その根本には、尊重され大切にされたいと願うクライアントを前にしてなお、クライアントが直面している状況の複雑さと厄介さを前にしてなお、変わることのない謙虚な姿勢がある。これまでと違うのは、個人的な関係になる必要があることと、プロセス全体の最大の原動力として好奇心を重視していることである。