幸福の意外な正体 ~なぜ私たちは「幸せ」を求めるのか

発刊
2020年1月28日
ページ数
272ページ
読了目安
325分
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推薦者

人はどのようにすれば幸福になれるのか
幸福とは何か。幸福学研究において発見されている基本的なことを紹介している一冊。人が幸福を感じるには、どのようにすれば良いのかといったヒントが書かれています。

人は幸福になるように進化している訳ではない

私たちが進化によってプログラムされているのは幸福そのものではなく、何が幸福をもたらすかをめぐる信念であり、幸福を追いかけようとする性癖である。そのことから次の3つのことが言える。

①人は今より将来の自分の方が幸せなはずだと信じているが、実際にそうなる人はほとんどいない

②社会が裕福になったからといって、人々がより幸せになる訳ではない

③将来の出来事がいかに自分の幸福を左右するかについて、人は常に間違った認識を持っている

幸せは「比較」に左右される

私たちは人生において、ネガティブな感情の量とポジティブな感情の量、どちらかが多ければどちらかが少ないはずだと考えがちである。ところが実際はそうではない。

ネガティブ感情とポジティブ感情を同時に持つことはあまりないけれど、人生を長い目で観察すれば、ネガティブ感情もポジティブ感情も両方頻繁に持つか、あるいは、どちらもあまり頻繁には持たないかのどちらかである。

他人より感情の浮き沈みが激しい人もあり、ポジティブ感情とネガティブ感情の起きる頻度には相関性がない。

人は満足度を自分で判断する場合、単純に喜びと苦しみの引き算とは別のことをする。人は過去のポジティブな出来事、ネガティブな出来事を現在の生活との比較に使う。そのため、過去のポジティブな出来事を考えた人は現在の状態を不本意に感じ、過去のネガティブな出来事を思い出した人にとっては、今の生活が良いものに思えてくる。

さらに自分が幸福かについての判断には、他人の生活との比較や可能性としてあり得た結果との比較といったものも関わってくる。自分が集団の中でどの位置を占めるかということが、人生をどう感じるかに大きな影響を与える。

どんな「幸せ」もあたり前になっていく

未来の幸福について考える時、人は自分の適応能力を忘れていることが多い。人は望ましい状態を1つ手に入れるたびに、私たちはそれに慣れてしまい、満足度は以前の状態に逆戻りしてしまう。その結果、私たちは再度頑張って進もうとするけれども、ネズミの回す車輪と同じで、結局どこにも辿り着くことはできない。

私たちは、所得や物質的な豊かさにはあっという間に慣れる。一方で、私たちが決して慣れないものには、後天的な障害や病気を抱えること、騒音がある。こうした慣れないことは、私たちの幸福度を下げる。

完全に慣れることがない騒音とすぐに慣れる所得の間に来るのが、結婚である。結婚は短・中期的には大きな変化をもたらすが、最終的にはかなりの適応をもたらす。

私たちは地位財をたくさん蓄えれば、いつかは幸せになれるはずだと考えるが、それはあり得ない。一方で、健康、自主性、社会への帰属意識、良質な環境などは、真の幸福をもたらす。

性格が幸福度に影響する

世の中には、どんなに辛いことが起きても明るく楽観的でいられる人と、どんなに恵まれた環境にあっても心配や悩みの種の尽きない人がいる。幸せかそうでないかは、実際の変化によるのではなく、その変化の扱い方に左右される。

幸福の感じ方は、遺伝によってある程度まで決まる。神経症的傾向と外向性という基本的な性格特徴の2つの内、神経症的傾向が強い人ほど幸福ではなくなる。逆に外交的な人は、生活の多くの面で物事がいい方向に変化するため、結果的に幸福を感じやすい。