インビジブル・インフルエンス 決断させる力

発刊
2016年12月20日
ページ数
368ページ
読了目安
538分
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人の決断は99.9%まで他人に影響を受けている
ありとあらゆる選択は、他人からの影響を受けている。自らの意思決定に大きな影響を与える周囲から力の仕組みを解説している一冊。より良い意思決定をするための方法を考えさせます。

人の決断は99.9%まで他人に影響を受けている

私たちがする選択は、自分の考えや意見によって決まるものだという考え方は、当たり前のように思えるが、そうではない。実は気がついていないだけで、私たちの人生は、ほとんどすべての側面において、他人からの影響を大いに受けている。私たちの決断は、99.9%までが他人によって方向付けられており、むしろ他人の影響を受けない意思決定や行動を見つける方が難しい。

人々は、他人の行動には社会的影響力が関係していることを理解できても、自分のこととなるとそれが見えなくなってしまう。私たちが自分は社会的影響力を受けていないと考える背景には、それが自分では見えないという理由がある。

人は他人の真似をする

育った場所や周りにいる人々が持つ規範や慣習などは、私たちの言葉から振る舞いまで、あらゆるものを規定する。どのブランドの商品を買うとかいった単純なことから、どんなキャリアを追求するかといったもっと重大なことまで、私たちは、周りの人たちがするように物事を決めていく傾向がある。他者を真似るというこの傾向は非常に根本的なものであり、動物でも確認されている。

私たちは、自分がより良い決断をするための有用な情報源として、他人を頼ることはよくある。他人を情報源として利用すれば、自分の時間と労力が節約できる。これは意思決定を単純化する1つの経験則である。ただ、たとえ答えを知っている時でも、他人の行動は、やはり自分の行動に影響を与えることがある。その理由は、周囲からのプレッシャーにある。ほとんどの人は、周囲から好かれたいと思っている。だから、多くの場合、人々は同じ方向に進む。

けれども、情報と周囲からのプレッシャーを別にしても、人々が同調するのにはもう1つ別の理由がある。人には周りの人の感情表現を模倣するという傾向がある。人間は顔の表情、身振り、行動、さらには言葉まで、周りの人に合わせて変化させる。他人を真似るという傾向は、赤ちゃんの時から見られるものだ。自分では気づいていなくても、私たちは周囲にいる人の行動を絶えず、そして自動的に模倣しているのである。

差別化への欲求を持つ

ほとんどの人は、自分一人だけで何かをするのは嫌だと思うが、同じことをする人があまりに増えると、次へ進んで別のことをしたくなる。相手が1人であれ、100万人であれ、他人と似すぎているというのは、負の感情反応を引き起こすことが多い。人を動揺させたり落ち着かなくさせたりする。だから、私たちは何かを選ぶ時、どこか違う感じを出そうという意識が働く。

違いは何かを定義づけるものとしての価値が高い。もしすべての人が全く同じならば、自己の感覚を持つことが困難だろう。差別化がアイデンティティの感覚を確立するのに役立つ。これは子供が大人へと成長する過程でよく見られることである。

類似性の海の中にいながら、私たちは個性の感覚を持っている。自分は違う、特別なのだという感覚だ。この違いを求める原動力には違いがある。中流階級の人々は、人気のあるアイテムを選ぶのを避け、自分が持っているものを誰かが選ぶと、それが好きだった気持ちが薄れる。ところが、労働者階級の人々は、人と同じになることにそれほど抵抗がない。彼らは人気のないものよりあるものを選び、自分と同じものを誰かが選ぶと、それがもっと好きになる。異なる文化の間でも、違いが果たす役割は変わる。個性とは、文化的背景から派生した好みの問題なのである。