ゲノム解析は「私」の世界をどう変えるのか? 生命科学のテクノロジーによって生まれうる未来

発刊
2017年9月14日
ページ数
232ページ
読了目安
228分
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生命科学の最前線では何が起こっているのか
ゲノム解析サービスを展開する起業家が、生命科学の進歩と現状、課題について紹介している一冊。

生命科学はテクノロジーによって進歩し続ける

生命科学とは「生命に共通の法則性を解き明かし、それを活用する学問」である。生命科学が誕生したのは、20世紀後半。きっかけとなったのは、1953年のDNAの2重らせん構造モデルの提唱である。DNAとは、細胞の中に含まれている名称で、遺伝子を司る実体のこと。遺伝子という実体のない情報を、DNAという「もの」として扱うことが可能になったことで、生命科学は飛躍的に発展してきた。

生命科学は、個別の事象の観察がメインであった生物学に、もの作りや応用開発を行うテクノロジーが加わった、常に進歩する学問という特徴がある。テクノロジーの要素を含む生命科学は、いつか世界を大きく変えるはずである。

ゲノム解析だけでは何もわからない

ヒトゲノム計画とは、人の全塩基配列(DNAの構成物の一部である塩基の並び)を明らかにする世界規模のプロジェクトである。1990年から始まり、2003年に終了した。当初、ヒトゲノムがわかれば病気の原因やメカニズムなど、何でもわかると思われていたが、結果は「ゲノムだけわかっても何もわからない」ということだった。

ある病気になるかどうかがゲノムだけで決まることは極めて稀である。ゲノムが同じだからといって、そこから作られるRNA、タンパク質の量が同じだとは限らない。RNAやタンパク質は体内の環境に応じて作られるため、食習慣や運動量などが変われば、作られる量は変わる。さらに代謝物となれば、より環境の影響を受けやすい。つまりゲノムだけ見ていても、わかることは限られている。

ゲノムデータを大規模に収集することで法則を見つける時代

ヒトゲノム計画を境に、生命科学に「生命をデータとして扱う」という流れが生まれた。大量にデータから共通点または差異を見つけることで、法則性を明らかにする。ヒトゲノム計画以降、2014年までに22万8000人のゲノムが解読され、2017年までに合計で160万人に達すると予測されている。ゲノムデータの収集量が加速度的に増加することで、研究成果も増えていく。ゲノム解析技術は飛躍的に向上しており、いずれは特定の遺伝子だけを知るのではなく、全ゲノムを生まれた時から知る時代になる。

何千人、何万人という人からゲノムを丸ごと集め、その中から目的のものを探す方法を「ゲノムワイド解析(GWAS)」という。GWASは、特に生活習慣病の遺伝的リスクを探索する有用なツールとして注目されている。これまでの遺伝子の一本釣りから底引き網漁法に変わったという意味で、生命を解明する方法のパラダイムシフトが起きたと言える。

ゲノム解析の進歩でこれまでの常識が覆る

ゲノム解析のスピードが高まることで、今までの常識では考えられなかったことが発見されることがある。今までの常識では、その遺伝子疾患を発症していないということは、原因となる遺伝子変異を持っていないと考えられてきた。ところが、発症する遺伝子変異を持っているにもかかわらず、発症していない事例が見つかったことで、発症を抑える有益な遺伝子があるかもしれないことがわかった。これまでの研究は、病気になる遺伝子変異に注目してきたが、「病気にならない」遺伝子変異にも注目する必要が出てきた。このことは、病気を発症している人だけでなく「発症していない人も調べる」必要が出てきたことを意味する。