縮小する日本
2053年には日本の人口は1億を切り、2065年には8808万人になるという。これから約50年間で3901万人の日本人が減少することになる。しかも、人口減少と並行して、急速な高齢化が進む。2025年には、日本は5人に1人を75歳以上の後期高齢者が占める超高齢社会に突入する。
こうした人口減少と高齢化によって、2010年時点で人が住んでいた地点の約2割が2050年までに無居住化地域になる。この時日本が直面する課題は、過疎地域の無人化というよりは、日本全体の過疎化とも言うべき事態である。
戦後一貫して、地方から都市へと大量に人を吸い寄せ、富を生み出すことで全体として成長を続けてきた日本。しかし、吸い込むものがなくなれば、そのサイクルは崩壊する。こうした、未来の日本が直面するであろう「人口減少」「高齢化」、それに伴う「財政難」にいち早く直面している地方自治体がある。2006年に353億円の赤字を抱えて財政破綻した北海道・夕張市だ。
縮小ニッポンの未来図『夕張市』
夕張では、破綻後、若年層の流出が加速し、過去10年間で人口の3割が減少した。その結果、住民の高齢化率は5割を超えた。夕張市の年齢構成を示す人口ピラミッドは、40年後の日本全体の人口ピラミッドに酷似しているという。夕張市は過酷な借金返済に追われ、住民サービスの前例のない切り詰めを余儀なくされている。
財政再生団体になった夕張市は、予算を編成するにも独自の事業を行うにも国の同意を得なければならない。2017年の債務残高は238億円。今後20年間にわたって毎年26億円を返済し続けていかねばならない一方で地方税収入は8億円。地方交付税交付金や国や道からの支出金によって、帳尻を合わせているが、台所事情は極めて苦しい。
市職員の給与は年収ベースで平均4割カットされ、全国最低水準に抑えられてきた。破綻前は399人いた職員は100人に減少。55人いた管理職は1/10に減った。図書館・公共施設は閉鎖。7校あった小学校、4校あった中学校はそれぞれ1校に統廃合された。市民病院も診察所に縮小され、171あった病床は19床に減らされた。子育て支援や福祉サービス、各種補助金も次々に打ち切られた。住民サービスの容赦ない切り捨てに嫌気がさした若い世帯は夕張を離れ、街には高齢者の姿ばかりが目立つようになった。
公共インフラの撤退戦が必要な時代へ
夕張市にとって、人口減少に加えて深刻なのはいびつな人口構造だ。高齢化率が5割に上る一方、15歳以下の子供の割合は6%未満。夕張市ではもはや人口を増やそうとは考えていない。この先も人口減少が続くことを前提に街づくりを進めている。その時にまず見直しを迫られるのは、住宅政策の撤退戦だ。
住宅の合理化は人口減少のペースに到底追いつかず、市は人口9000人を切ってもなお3400戸を超える市営住宅を管理しなければならない状況に陥っていた。市営住宅、橋梁、水道管、道路など市が現在管理しているインフラを今後40年にわたって維持し続けるためのコストは488億円と試算された。現状の公共インフラをそのまま維持し続けるのは到底不可能で、今後ほとんどの自治体でもインフラを大幅に縮小していかなければ財政が持たないことは判明している。
将来世代の負担増を避けるためには、逃げることが許されない公共インフラの撤退戦。そのために夕張市で行われたのが、現在かかっている行政コストを可視化し、住民に示し、理解を得ることだ。
縮小の時代。その時、自治体職員達は住民の痛みに正面から向き合うことを迫られる。