ゼロ―――なにもない自分に小さなイチを足していく

発刊
2013年11月1日
ページ数
240ページ
読了目安
269分
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ホリエモンが語る「働く」ということ
逮捕され、すべてを失った元ライブドア代表の堀江貴文氏が、自分の生い立ちや、刑務所で考えたこと、そして「働くとはどういうことか」について語った自伝的1冊。
人生を主体的に生きるためには何が必要かが書かれています。

それでも僕は働きたい

2000年代の前半、僕は時代の寵児と呼ばれていた。学生時代に起業したIT企業が、27歳を迎えた2007年に東証マザーズ上場。そして2004年には当時の近鉄バッファローズ買収に名乗りを上げ、メディアに大きく採り上げられる事となる。続く2005年にはニッポン放送の筆頭株主となり、日本中を巻き込むほどの大騒動となった。起業家ブームの象徴として、「あこがれる経営者」ランキングで日産のカルロス・ゴーン氏に次いで2位に選ばれたりもしていた。

ところが、翌2006年の1月。僕は東京地検特捜部から強制捜査を受け、証券取引法違反の容疑で逮捕される事となる。ライブドアの前身である有限会社オン・ザ・エッヂを設立してから、ちょうど10年後の事だった。

命懸けで育ててきた会社を失い、かけがえのない社員を失い、社会的信用も、資産のほとんども失った。収監されてから仮釈放されるまでの1年9ヶ月、僕の心を捕えて放さなかった言葉、それは次の一言に尽きる。「働きたい」、そうとにかく働きたかったのだ。

やりがいはつくる

今も昔も、僕はお金が欲しくて働いている訳ではない。あなたは、働く事を「何かを我慢すること」だと思っていないだろうか。そして給料の事を「我慢と引き換えに受け取る対価」だと思っていないだろうか。もしそうだとしたら、人生はねずみ色だ。

多くのビジネスマンは、自らの「労働」をお金に換えているのではなく、そこに費やす「時間」をお金に換えているのだ。自分の時間を差し出しておけば、月末に給料が振込まれる。そんなものは仕事ではないし、働いていても楽しくないだろう。たとえ会社員であっても、自らの給料を「稼ぐ」意識を持たなければならない。そして積極的に稼いでいくために、自分は「時間」以外の何を提供できるのか、もっと真剣に考えなければならない。

やりがいとは「見つける」ものではなく、自らの手で「つくる」ものだ。そして、どんな仕事であっても、そこにやりがいを見出す事はできるのだ。刑務所で最初に与えられた仕事は、無地の紙袋をひたすら折っていく作業だった。与えられたノルマは1日50個。ところが、意外にこれが難しい。どうすればもっと早く、うまく折る事ができるのか。担当者に教えてもらった手順をゼロベースで見直し、自分なりに創意工夫を凝らし、3日後には79個折る事ができた。仕事の喜びとは、こういうところからはじまる。仮説を立て、実践し、試行錯誤を繰り返す。そんな能動的なプロセスの中で、与えられた仕事は「つくり出す仕事」に変わっていくのだ。

人は何かに「没頭」する事ができた時、その対象を好きになる事ができる。大切なのは順番だ。人は「仕事が好きだから、営業に没頭する」のではない。「営業に没頭したから、仕事が好きになる」のだ。つまり、仕事が嫌いだと思っている人は、ただの経験不足なのだ。没頭するには、「自分の手でルールをつくること」である。

まずイチを積み重ねる

仕事や人生においてラクをすること。それは、掛け算を使うという事だ。同じ時間、同じ労力を使いながら、より大きな結果を残していく。しかし、人は誰しもゼロの状態からスタートする。そしてゼロの自分にいくら掛け算をしても、出てくる答えはゼロのままだ。最初の一歩は「足し算」であり、「掛け算」を考えるのはずっと後の話なのだ。知識やテクニックを覚えるのは、イチを積み重ねた後の話だ。

ゼロからイチへの足し算を繰り返し、自分に自信を持てるようになる。そうすると、目の前にたくさんの「やりたいこと」が出てくるようになる。突き抜けられる人と、そうでない人の違いは、次の1点に尽きる。物事を「できない理由」から考えるのか、それとも「できる理由」から考えるのか。それだけだ。

人はメシを食うために働くのではない。働くことは生きること。僕らは、自らの生を充実させるために働くのだ。