中国人起業家たちのマインドセットの変化
中国は既に「模倣大国」のレッテルをはぎ取り、過去10年間にIT部門をGDPの2倍の速さで伸展させてきた。2019年胡潤グローバルユニコーン企業ランキングによれば、中国のユニコーン企業は206社で、米国203、3位のインド21を上回って世界最多である。
いくつかの要因が、中国で急速に育ちつつあるイノベーションの文化をもたらしてきた。1つ目の最大の要因は「私にもできるはずだ」というマインドセットだ。改革開放路線の初期、多くの中国人起業家は自分自身の経済状況と、中国以外の国々の大実業家たちとの大きな落差を目の当たりにした。その悔しさに突き動かされて懸命に働き、自分たちも成功できることを世界に示してきた。やがて成功を収める中国人起業家たちが現れてくると、彼らが他の中国人たちのロールモデルとなり、特に若い世代の起業家たちは、そうしたロールモデルの成功例を自ら再現することを望んだ。
起業家型の破壊者たちが主役
1990年代前半から、中国は世界で最も急速に発展する経済国であり続けている一方で、数多くの批判を浴びた。中国の経済的な成功は中国政府のアンフェアな商習慣によるところが大きい。重商主義的貿易体制、人民元レートを低く抑える通貨操作、中国企業に門戸を開くよう外国市場に強要する活動、製造業者への補助金、横行する外国の商品やテクノロジーの無断複製。さらには国有企業の影響力も大きく、国有企業の多くは、中国の外貨準備高4兆ドルから資金を調達し、海外に多額の投資を行なってきた。
だが、中国経済を頑なな政府が主導する重商主義と見ているだけでは、中国の世界に最大のインパクトを与えうる部分は語れない。それは起業家精神に溢れる新たなビジネスリーダーたちの台頭である。彼らは民間部門から現れ、多くは政府の影響もサポートもほぼ受けずに事業を進め、各業界を変革している。こうした起業家型の破壊者たちこそ、今日の中国で最大級の成功と力を手にしている。
米国に匹敵する経済規模
毛沢東が死去した1976年の中国には民間企業がなかった。当時、国の工業と農業はすべて公有で、中央政府か地方政府によって、あるいは集団を通じて経営されていた。2015年時点では、35年にわたる経済改革のおかげで、民間部門が中国の経済生産高の3/4以上を占めている。
中国は経済規模と活況が米国に匹敵する唯一の国だ。しかも、未だに経済発展の初期段階にある。国内市場の規模ゆえに、中国は自国に設立された事業を拡大するだけでグーグル、フェイスブック、ツイッターに比肩しうる企業を生み出せる唯一の国だ。
中国はバーチャルな商品と同様、実体のある商品についても世界的トレンドを形成するだろう。2010年には米国を抜いて世界最大の工業生産国となった。
中国国内市場の急成長
2010年以前の中国で物を売るのが難しかったのにはたくさんの理由があった。インフラの不足、ばらばらで概ね非効率な物流業者グループ、消費者信用の不足、そして国民の多くにオンラインで支払いをする手段がないこと。外国企業にしてみれば、中国市場は将来的には魅力はあっても、この国で業務を行う主な理由は、世界に向けて輸出する製品を作ることだった。
だが今でも何もかも変わった。以下の4つの要因によって、中国の消費者人口は、多くの起業家精神溢れる民間企業を支えるようになった。
①規模:中国の膨大な人口、より良い暮らしへ向かう余裕のできた人の増加
②開放性:中国の市場が民間企業、外国企業に対しての自由化を継続
③公的支援:政府が成長に必要な物的インフラ、政策インフラを提供
④テクノロジー:インターネットが新しい市場へのアクセスを創出