アイデアをどう着想するか
起業をする背景には、大別すると2つの出発点がある。
①自分軸
自分の視座、意思、信念、感性、感情、経験など、自分自身の信じることや自己の能力から着想する。
②マーケット/社会軸
事業環境、競合の動きなどから、事業の機会、実現性、可能性を検討しつつ着想する。
自分自身の心に響き、しかも客観的に捉えても実現性が高く、可能性の大きな事業アイデアを探し求めるのが起業の始まりである。
起業家はどのようなニュースからでもアイデアを考える。アイデアの見つけ方は3パターン。
①事例起点(過去)
例えば米国や中国で流行っているサービスの日本版を考えることで、アイデアの具現化を進めていく。事例起点でアイデアを着想するには、最先端のニュースを日々チェックしている必要がある。
②課題起点(現在)
自分が今使っているサービスに普段から感じている不満や、仕事をする中で発見する課題から「こうしたらもっと便利になるんじゃないか?」とアイデアを考えていく。自身が感じた課題(直接体験)を起点とする場合と、他人が感じた課題(間接体験)を起点とする場合に分類される。間接体験型では、ターゲットユーザーが感じる課題の背景が手に取るようにわかるところまで、徹底的に観察しなければならない。
③構造変化起点(将来)
ユーザーの行動や技術の進化・環境の変化から新しいビジネスチャンスを見つける。政治、技術、経済、社会、法律・規制、自然環境などに関する中長期的な変化を捉え、それを予測する。この未来を予測するアプローチはタイミングを読み違えることもあるため、一定のリスクを抱える。予測自体は正しくとも、十分なユーザーがいなければビジネスとして成立しない。
起業家に共通するのは、自らが戦う事業領域において、誰よりも詳しくなるまで情報収集をしていることである。原体験がなくとも、半年間徹底的に情報を追いかければ、その分野で働く人と渡り合える知識を蓄えることはできる。
アイデアをどう評価するか
どんなプロセスを経て生まれたアイデアであれ、必ずぶつかるのが実現性の壁だ。「そのアイデアが正しいか」を評価するのは難しいが、指針はある。
①誰の何の課題を解決しているのか(ターゲット顧客は誰か。どうニーズを満たし、ペインポイントを解決するのか)
顧客の視点から見て、目の前にある課題をどうやって解決したいのか。どうして未解決なのか。サービス提供者の視点を捨てて、顧客側からプロダクトやサービスのあるべき姿を考えることが重要である。まずは具体的な1人のユーザーを見つけることが大切である。
②スケールできるのか(十分な市場規模があり、大きな事業規模を見込めるのか)
スケールは、市場規模(顧客が解決できる課題に払う金額の総和)から導き出される。最終的に獲得可能な事業規模はどれくらいの大きさなのかがアイデアを評価する段階では重要になる。
③既存のサービスに置き換わる新しいサービスか(差別化、競争優位性があるのか)
ターゲット顧客が現在どのような代替手段を用いているのかを考える。ほとんどの場合、顧客は代替手段を既に用いている。ニーズが強ければ強いほど、代替手段が存在しないことは考えづらい。その代替手段と比較して、自分のアイデアは圧倒的に優れた顧客体験を届けることができるかが重要である。
④ビジネスとして成立するのか(収支が合うか。KSFを理解できているか)
アイデアを評価する際には、LTV(顧客1人あたりの生涯収益)がCAC(顧客獲得コスト)を上回っているかが重要である。どんなに顧客を獲得しても永遠に収支がプラスにならなければ、事業を続けることはできない。
収益性が確保できれば、KSF(事業成功の重要要因)を押さえなければならない。業界で勝ち残っていくためのKSFは何なのか。業界で古くから活躍している起業の成功要因とKSFをきちんと調べていることは必須である。
⑤数年後により多くの人に使われるサービスか(将来性があるのか)
未来志向の視点を持ち、今のマーケットリーダーが理解できていないトレンド、まだ不確実性の残る領域に活路を見出すこと。誰よりも先に未来の兆候に気づき、これまでの常識とのギャップを活用してサービスを設計すること。