ユーロディズニーの低迷
世界のテーマパークランキングを見ると、ディズニーとユニバーサル・スタジオの2つが上位を占めている。さらに、この2つのグループの本拠地米国と、日本にあるテーマパークだけが大成功を収めている。そして、他国の状況は小さな成功でしかない。
ディズニー社は東京ディズニーランドの成功をふまえ、ユーロディズニーを1992年に開業。しかし、業績は当初の見込み通りになっていない。初期投資に莫大なコストをかけたことや、開業翌年からの入場者数低迷、客単価の低さに加え、近年ではテロの不安など加わって、2016年9月決算では、純損失が1000億円と過去最悪となった。
日本以外の二大テーマパークの低迷
現在、米国と日本、フランス以外には、香港と上海にディズニーランドがある。香港は2005年に開業したが、ゲストのマナーが悪く、園内の雰囲気が台無しになったという問題が持ち上がる。また、香港市民への割引を不公平だとするクレーム、キャストからの過酷な労働環境への訴えが起こされた。こうした混乱への嫌気や割高感のあったチケット価格、敷地面積の狭さやアトラクションの少なさといった原因によって、入場者は伸び悩んだ。開業以来7年目の2013年から3期連続で黒字を計上したが、以後は赤字に転落した。
上海ディズニーランドは2016年6月に開業した。開業から1年目で入場者数は1000万人を突破し、中国本土のテーマパーク1位になると予測される。しかし、その数字を達成しても東京ディズニーランドやUSJに追いつくことはできない。
そもそも、ディズニーランドとユニバーサル・スタジオという二大テーマパーク事業の世界では「開業に至らなかった」例の方がはるかに多く存在する。東京ディズニーランドの大成功に目を奪われ、政策や好景気に背中を押されて、楽観的予測のもとにバラ色の青写真を描くものの、採算性に問題が発生すると、関係者が一斉に手を引き、あっけなく計画が頓挫するという経緯を辿る。
テーマパーク運営の3つのリスク
①著作権会社ディズニー社、ユニバーサル社による米国主導の、効率を最優先した経営手法は、時に大きな効果が期待できるが、現地の運営者との摩擦を生むことがある。
②現地運営責任者
テーマパーク事業には巨大な資金が必要で、大きな利権が動く。参加者たちのほとんどは、テーマパークの理想像など関係なく、自らの利益のためだけに動く。
③ゲスト
米国文化を受容する意識の有無によって、テーマパークの魅力の源泉「テーマ」を維持することができない恐れがある。
テーマパークを大成功させるために必要なもの
テーマパーク運営の3つのリスクは、「社会互酬性」という考え方によって、良い方向に導くことができる。社会互酬性とは「いつ誰から見返りが返ってくるかわからないけど、善意を施せば、そのうち誰かから恩恵が得られるという期待」を言う。
社会互酬性を重んじ、一人では手に余る問題に対し、文殊の知恵を寄せ集めて前に進もうと言う「橋渡し型」の人間関係を育み、信用を生み出す。そのために必要な要素が「勤勉」「節約」「几帳面」「正直」である。これらの原動力となるのが「夢」「ロマン」「情熱」の3つである。
テーマパークを成功させるには、まだ見ぬゲストのために、身を粉にして働く覚悟が必要である。それをやり抜くには、夢、ロマン、情熱が不可欠である。