ブリッツスケーリングとは
「ブリッツスケーリング」とは、企業が信じられない速度でスケールアップするための一般的なフレームワークと特定の手法の両方を指す。ブリッツスケーリングはあらゆる直感に反するアプローチだから、苦難の道でもある。
常識的なビジネス戦略では、まず情報を収集し、最も成功の可能性が高そうな手段を選択する。常識に従えば、リスクは引き受けるが「計算されたリスク」に留める。一見、慎重で堅実に見えるこの方法は、残念ながら新しいテクノロジーが登場して市場の構造を根底から変えてしまった場合には通用しない。乱戦になってしまえば、リスクは非効率から生じるのではなく、「慎重すぎる」ところから生じる。負ければそこまでの効率性は高かろうが低かろうが全く意味がない。
ブリッツスケーリングではスピードを最優先し、効率を犠牲にする。しかもその犠牲が有効なものであったかどうか、結果を確認する暇も惜しむ。
3つの基本
ブリッツスケーリングには、チームが間違いなく辛いと感じるようなスピードが必要である。
①攻めの要素と同時に守りの要素がある
他社が気づいて反撃に転じる前に、初期のリードを生かして長期的な競争力をいち早く確立しなければならない。ライバルが付いてこられないスピードで前進することで防御する。
②先に規模の拡大を達成した会社が競争優位を得る
前向きのフィードバックサイクルが急速な成長を生む。周囲は最初にスケールアップしたスタートアップに対し、そのエコシステムでのリーダーだと認識する。そうなると人材と資金の双方が洪水のように集中する。
③巨大な利点がある一方でリスクも極めて大きい
急速な成長は、それが解決するのと同じくらい多くの問題を引き起こす可能性がある。ある程度の制御を維持しながら壊れた部分を迅速に修復し、会社が炎上したり崩壊したりすることなく猛烈な成長ペースを維持できるようにするのが正しい。
3つの重要なテクニック
ブリッツスケーリングを成功させるためには3つの重要な要素がある。
①ビジネスモデルのイノベーション
急速な成長を遂げる革新的なビジネスモデルを発見し、設計する。スタートアップが犯す間違いで一番多いのは、テクノロジー、ソフトウェア、プロダクト、デザインには集中するものの、それをビジネスにする方法を見つけることを怠ることだ。結局、鍵となるのは、新しいテクノロジーを潜在的な顧客に効果的に提供する方法と急速に巨大化しても高い利益率を維持できるビジネスモデルだ。
優れたビジネスモデルには共通の特性がある。最適なビジネスモデルでは、主要な4つの成長要因が最大化されており、主要な2つの成長阻害要因が最小化されている。
成長要因:1.市場規模 2.ディストリビューション 3.粗利益率の高さ 4.ネットワーク効果
成長阻害要因:1.プロダクトとマーケットの不適合 2.事業スケーリング
②戦略のイノベーション
ネットワーク効果などビジネスモデル自身に組み込まれた要因によって、ブリッツスケーリングは競争上の優位性をもたらす。ブリッツスケーリングでは伝統的なビジネス戦略からは「ムダ」と思えるような資金を投じる必要がある。こうした攻撃的な投資をサポートする金融戦略は、決定的に重要な部分だ。
③経営のイノベーション
急速な成長は、組織にもそのメンバーにも極度の負荷をかけるため、経営そのものも革新しなければならない。まず直面するのは、人材獲得という課題だ。社員数が毎年3倍になることも珍しくなく、普通の成長企業とは根本的に異なるアプローチが必要になる。