科学の教養大全

発刊
2026年8月6日
ページ数
368ページ
読了目安
450分
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世の中を理解するための知識が深くなる本
科学教養系YouTuberである著者が、生命、人間、自然、宇宙など、世の中の様々な事象について、科学的に判明している事柄を紹介し、世界を理解するために役立つ知識を集めた一冊。

現在わかっている最先端の科学的な発見を、短時間でわかりやすく理解できるようにまとめられており、世の中の不思議や根源的な物事を理解できるようになります。単なる豆知識として読んでも面白い内容が書かれています。

なぜ人は1種しかいないのか

1種しか存在しないものは、疫病や天敵に弱く、極めて危険である。ヒトが1種類しか存在しないのは、人間に近い25種類くらいの動物が全部滅んだからである。

地球史に人類が初めて現れたのは700万年前。250万年前にはパラントロプス属とホモ属という2つに分岐し、パラントロプス属は絶滅。ホモ属の中でも色々な種が誕生し、最終的にホモ・サピエンス1種のみが生き残った。その中で大きな生存競争が起きたのは大きく分けて2回。

  1. パラントロプス属とホモ属の対立
    パラントロプス属は、地中の球根を食べる戦略をとったが、栄養が少なく硬いため、1日のほとんどを食べることに使った。一方、ホモ属は、肉を食べる戦略を取り、石器を作りながら死肉を食べて脳を発達させた。
  2. ホモ属の中での生存競争
    最終的にホモ・エレクトスの中から道具作りが得意な系統が生まれ、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスが残った。そして、ホモ・サピエンスは体格も強さも上のネアンデルタール人に対して「群れの規模」で勝った。ホモ・サピエンスは「虚構」を共有することで、大きな集団をまとめられるようになった。

 

なぜ生物は死ぬのか

原初の生命である単細胞生物には明確な寿命がない。しかし、ある程度複雑な生物には寿命が備わっている。つまり、進化の段階で生命はわざわざ死を獲得した。現代人は寿命により、老化の過程で死ぬ。老化とは細胞の機能が徐々に低下し、異常が起こる細胞なども出てくる生理現象である。細胞の弱体化は、様々な病気を発生させ、死に至る。

細胞は分裂し続け、常に傷ついた古いものを捨て続ける。その過程で、歳をとるとDNAコピーミスの可能性が高まり、人体にエラー細胞が蓄積されていく。DNAが完璧にコピーされないのは、環境変化に対して、多少ミスし、突然変異を起こすことで多様性を増やすことが生存につながったからである。

 

細胞分裂のコピーミスをしなくても、ある程度進化が進んだ段階で生命は「有性生殖」という多様性を生む機能を獲得した。個体を増やす際にコピーではなく、2つの個体の遺伝子を半分ずつ出し合って新たな個体を生み出す機能である。この有性生殖と同時に獲得された機能が死である。

有性生殖では子供の方が親よりも必ず多様性が高くなる。しかし、遺伝子を混ぜるのはいいことだけでなく、DNAエラーも引き継がれることにもなる。すると種全体にDNAエラーが蓄積され、絶滅する可能性が高まる。そのため、長い間生きてDNAエラーを蓄積した古い個体を一斉排除できるシステムが必要になり、これが「寿命による死」の起源となった。

 

意識や睡眠はなぜ生まれたのか

近年、脳が存在しない「クラゲも眠る」という革新的な発見があった。従来、睡眠は脳を休ませるために存在すると考えられてきた。しかし、脳のない生物も眠るという事実は、睡眠は動物が脳の進化よりも先に獲得していた可能性があることを示す。

 

脳がどのようなプロセスで意識を生み出しているのか、現代科学でもほとんどわかっていないが、1つだけ分かっているのが「意識は進化によって獲得された形質である」という点である。

意識のない動物は環境に反射的に動いたり、本能的に行動するだけである。一方、人間は思考し、判断して行動する。この「主体性」こそが意識の有無の違いである。進化において、意識が生まれた過程として有力なのが「食料探し」である。

 

多くの微生物はランダムに動き回り、ただ口に入る食料を待つだけで、意識はない。そんな中、センモウヒラムシという微生物は「食べ物があれば減速し、なければ加速する」という戦略を持っている。これは外的要因への反射運動である。アメリカナミウズムシという生物は「空腹の時は動き、満腹の時は動かず暗い場所で消化を待つ」という戦略をとる。この「休息をとる」という行動こそが、現代の「睡眠」の起源ではないかという説がある。

「睡眠は脳のためではなく腸のためにある」という説である。腸には脳に次いで多くの神経細胞が存在し、ネットワークを形成している。そして、通常、睡眠時には身体の臓器の活動はゆっくりになるが、睡眠中こそ腸は活発になり、消化や食べ物の栄養を吸収する。

 

では、意識はどこで獲得されたのか。転機は、急激に五感が進化したためだとされる。特に視覚と嗅覚が進化したことで、捕食者と被捕食者の生存競争が激化した。視覚や嗅覚を上手に利用するとは、脳内に「世界の地図」を描くこと。視覚や嗅覚の情報を一時的に記憶することで、脳内に世界の地図を作り、自発的に行動する。意識はさらに進化し、時系列を含む出来事の記憶「エピソード記憶」のために存在するのではないかという説が出ている。無意識で時間軸のある記憶を作ることはできない。より高度な生物は、エピソード記憶を獲得するために意識を持つようになったと考えられている。

 

参考文献・紹介書籍