会話こそが第一歩
会話には筋書きなどなく、議論を前へ進めることのできる特定の会話術などない。「行き詰まった会話」から抜け出すのに必要なのは、「言うべき正しいこと」を見つけることではなく、より根本的な変革、つまり自分のあり方を変革することだ。対立や行き詰まりは、特定の視点や考え方やあり方に固執する限り続いていく。人が行き詰まりを突破するのは、自分を解放し、自身の考えや行動パターンを拡張する時だ。自分が本当に望む未来を把握し、その未来に見合った姿勢やあり方をつくる。そこから、言葉や会話が自然と流れてくる。そのプロセスを通して、私たちは未開の領域を上手く進んでいくことができる。相手の抵抗に心から向き合える。
対立とは両者の考えがどれほど左右に開いているかが問題なのではない。対立とは、異なる価値観を包み込む健全なコミュニケーションや会話が機能不全に陥る時に起こる。どんなケースでも、行き詰まりを抜け出す第一歩は会話にある。会話の力を利用することで、行き詰まりを突破し、対立を目標達成につなげる原動力へと変えることができる。
行き詰まりを抜け出す鍵
行き詰まった問題や会話に対するアプローチには「パワープレイ」や「フレーミング」といったものもあるが、より良い世界を作るためには、「オーセンティック(偽りがないこと)」な会話で他者とつながること。
大抵の場合、「オーセンティック」という言葉は、過去の信念や発言、振る舞い、文化的アイデンティティと一貫した行動をとる際に用いられる。この一般的な考え方は「静的」なもので、行き詰まりや対立を強固なものにしかねない。過去との一貫性よりも、心から望む未来に照らして一貫した態度を取り、学びと成長のプロセスに乗り出すこと。これを「動的なオーセンティシティ」と呼ぶ。
動的なオーセンティシティの鍵は、自身の非一貫性や矛盾を正直に認め、さらけ出すことだ。行き詰まりから抜け出すためには、自分のあり方が動的にオーセンティックなものかどうかを見定めるといい。
会話の落とし穴を知る
最初のステップは行き詰まっていることを素直に認め、主体的にそこから抜け出そうとすることだ。「行き詰まり」っている原因である落とし穴を特定すれば、目的の場所へ効率よく進むことができる。
第二のステップは、行き詰まっているのは自分だけではないと認識し、行き詰まりのパターンを知ることだ。典型的な落とし穴の種類は以下の通り。
①誰かがするべきだ
②君よりは高潔だ
③先のことは分かっている
④一匹狼
⑤これがやるべき正しいことだ
⑥無私または身勝手
⑦今すぐにだ!
⑧人間あるいは自然
⑨問題中心主義
一度、行き詰まりへとつながる会話を特定すれば、日々の生活の中で注意を払うことができるようになり、再び落とし穴に陥るのを避けることができる。
自分の本当の動機を見つめ直す
会話を行き詰まりから抜け出させるために、まずは自分自身についてや自分にとって何が一番大切かを見つめ直さなければならない。その作業を進めていけば、全く新しい会話の下地を作り出すことができる。
自分の内発的動機を知る1つの方法は、自分が築きたい未来を思い描き、そこにいる自分を想像することだ。それは自分にとって何が大切かを知り、新しいあり方を体験する助けになる。新しいあり方を築き上げて体現すると、直面している問題や行き詰まっていた会話に対する観点を変えることができる。