AIエージェントによる大きな変化
現在、私たちはAIに逐一指示を出している。ところが将来は、AIが自分で判断して動いて、重要なことだけ人間に確認する関係になっていくはずである。AIエージェントが普及すると、日程調整のような面倒な作業から解放される。誰もが「個人秘書」を持てるようになり、働き方が大きく変わる。
また、AIを活用すると、情報の整理も格段に楽になる。日々のメモや会議の記録をAIに読み込ませておけば、AIが整理・保管して必要な時に教えてくれる。そのためには、自分のメモや記録を「AIが読み込みやすい形」で取れるかが重要になる。AIフレンドリーなツールの使い方を身につけている人と、そうでない人とでは今後大きな差が生まれる。
AIエージェントは、1人1人の働き方を変えるだけでなく、ビジネスそのもののあり方を根本から変える可能性がある。これまでのインターネットビジネスは「アテンション・エコノミー」と呼ばれ、人間の「注目」を奪い合う競争だった。ところが、AIエージェントが広がると、企業のマーケティングの相手は「人間の目」ではなく「AIエージェントのアルゴリズム」になる。「AIに選ばれる」競争へとビジネスが移り変わろうとしている。
AIエージェントの弊害
現在、情報収集は、まず大量の生データを集め、その処理はAIに任せるのが主流になりつつある。人間の認知の限界を超えた量の情報を、AIが瞬時に処理してくれる世界が到来した。従来は、まず目的に対して「何が必要か」を決めてから情報を集めていた。ところが、AIファーストの時代は、まず関連しそうな情報をできるだけたくさん集めて、AIに投入する。何が必要かは、AIの分析結果を見てから考えるようになった。
この先には、AIが自分で情報を探しにいく時代が待っている。自分自身の好みや関心、仕事のスタイル、過去のやり取りをAIの中に再現し、分身AIをつくる。分身AIが他の人のAIエージェントと直接やり取りし、情報を交換してくれる。こうなると、情報収集の主役は人間からAIに移る。
AIファーストで情報収集を始めると、「生データ」の価値が高まる。AIにとってはデータ量の多さは問題にならないため、「人間のために加工された情報」よりも「素材のままの情報」の方が、AI時代には価値を持つようになる可能性が高い。
この変化は私たちの身の回りにも既に溢れている。NetflixのサムネイルやSpotifyのプレイリスト、Amazonのおすすめ商品、TikTokの動画など、ハイパーパーソナライゼーションが実装されている。このような世界では、情報が「先回り」して提供されるようになる。AIの方から「今日はこうした方がいいですよ」と提案してくれるようになるだろう。
便利ではあるが、これは同時に私たちがどんどん受け身になっていくということでもある。また個人への最適化は「フィルターバブル」という問題を引き起こす。自分の興味関心に合った情報ばかりが表示され、異なる意見や新しい視点に触れる機会が減ってしまう。
ハイパーパーソナライゼーションが究極まで進んだ世界では、全員がVIP待遇になる。すべて先回りして情報が処理される。優秀な秘書がずっと横にいるイメージである。危ういのは、便利すぎることで、あっという間に依存してしまう。そして、「自分で考えて動く」感覚が鈍っていく。
ハイパーパーソナライゼーションには、私たちが「選べなくなる」という問題もある。「自分で選んでいる」と思い込んでいるだけで、実際にはAIに選ばされている世界が既に始まっている。自分で選ぶ力が衰え、自分が本当は何を好きなのか、わからなくなっていく。
AI時代に求められること
世界がAIで変わる時、求められるのは次の2つである。
①自分のやっていることを言語化する力
自分が何をしているのか、なぜそうしているのか、それを言葉で説明できる能力はAIファースト時代には欠かせない。なぜなら、AIに学ばせるには言語化が必要だからである。AIの出現前や、AIに関係なく経験を積めた人の能力は重要になる。
②選ぶ力
これからはAIが瞬時に創作物を100個の案を出してくれる時代になる。そうなると、その中から選ぶ力が問われる。また、なぜそれを選んだのか、ストーリーを語る力も求められる。この選ぶ目を養うにも、身体を使った経験が重要になる。AIを使わずに、自分の手で作ってみること、自分の目で見て、自分の耳で聞いて、自分の体で感じること。その経験がないと、AIが出してきたものの良し悪しを判断できなくなる。
今後は「アウトプットの中身」ではなく「アウトプットの方向性」を決めることが、人間の仕事になる。「何をつくるべきか」「何を問うべきか」「何を伝えるべきか」を決めるのは人間である。