だからベンチャーキャピタルはやめられない

発刊
2026年5月22日
ページ数
300ページ
読了目安
384分
推薦ポイント 4P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

よくわかるベンチャーキャピタルの仕組み
ベンチャーキャピタルをゼロから立ち上げ、様々な苦労や経験を積んできた著者が、ベンチャーキャピタルの仕組みや仕事の醍醐味を紹介している一冊。

ベンチャーキャピタルにとって生命線となるファンド組成の難しさや、投資先を選定する時のポイントなど、ベンチャーキャピタルが実際にどのような仕事をしているのかがよくわかる内容になっています。ベンチャーキャピタルに興味がある人にとって、業界や仕事の全体像を理解するのに役立ちます。

ベンチャーキャピタルの仕組み

VCはスタートアップに数億円、数十億円を投資するが、この多額の資金をVC1社だけで賄うことはできない。そこでVCはファンドをつくり、複数の投資家からお金を集める。これをファンドレイズと言う。

 

VCのファンドに出資する投資家はLP(有限責任組合員)と呼び、主に金融機関や事業会社などが資金の出し手となる。例えば100億円のファンドを組成する時は、LPに1口1億円単位で出資してもらう。一方、ファンドの運用者としての義務を執行する人・会社はGP(無限責任組合員)と呼ばれ、投資先の選定や決定、売却の判断について、最終的な意思決定を行う。GPは出資した投資先がIPOをしたりM&Aをされたりすることで、キャピタルゲインが得られると、そのリターンを都度LPに分配する。

 

GPを務めるVCの収入は主に2つある。

  1. 管理報酬:ファンドを運用・管理する手数料。ファンド総額の2〜2.5%の金額が一般的。
  2. 成功報酬:IPOやM&Aなどによって得たリターンの20%程度。

 

VCはLPからファンドレイズすることで投資を行うが、GPも自腹を切っている。ファンドを組成する時、GPはファンド総額の1%を自己資金から出資する義務がある。100億円のファンドを組成するなら1億円の出資が必須になる。

 

こうしたVCファンドは、次の5段階のプロセスを経て立ち上げられる。

  1. ファンドコンセプトを考える
  2. GP体制の構築
  3. アンカーLP(ファンド全体の20〜30%程度を出資する大口投資家)の獲得
  4. 適格機関投資家特例義務の届出
  5. 本格的なファンドレイズ

長期間ファンドレイズを続けると、最初に出資したLPと後から出資したLPで不公平な条件になるので、一般的にファンドレイズ期間は募集開始から1〜1年半と決められている。

 

ファンドレイズが順調に進めば、次は投資先を選定するフェーズに入る。LPから預かった資金を投資するため、VCは投資先に対してシビアな投資判断をする。しかし、資金を出資する投資家が起業家よりも上の立場かというと、そうではない。国内だけでも300社以上のVCが存在するため、起業家はどのVCに出資してもらうのが魅力的かを天秤にかけて、VCを選ぶ。VCと起業家はお互いに選び、選ばれる関係にある。

VCの仕事は単に有望なスタートアップを見つけ出して、資金を提供するだけではない。出資をした投資先が成長を遂げられるよう、様々な支援をする。助言したり、事業計画・資本政策づくりをサポートしたり、取引先やパートナーを紹介するといったことである。

 

立ちはだかるファンドレイズ

いくらベンチャーキャピタリストが優秀な投資眼を持っていたとしても、ファンドレイズで資金を集められなければ、VCとしての投資活動は行えない。VCを始めるにあたっての最初の壁は「1号ファンド」のファンドレイズである。

 

1号ファンドのファンドレイズには「売り物」がない。経験を積んでいれば、過去にIPOに導いた投資先やM&Aで当初の何倍もの価値で売却できた投資先など、過去の実績を売り物にできる。しかし、1号ファンドではそれがなく、自分たちのファンドのコンセプトやビジョンなどを語り、共感を得るしかない。

 

IPOできるスタートアップを発掘する

VCファンドの成功の鍵は、有望なスタートアップを発掘することである。1号ファンドで1社でもIPOを実施する企業を出せるかどうかでその後の展開が激変する。1号ファンドの投資先が軒並み低迷するようだと、LPからの信頼はガタ落ちで、新たなファンドが立ち上げられなくなり、VC存続も危うくなる。

だから、ベンチャーキャピタリストは、有望なスタートアップを見つけ出すために努力を惜しまない。他のVCに先を越されないよう、様々な手を使って投資先を探す。スタートアップが集まるイベントには積極的に足を運ぶし、夜は起業家が集まる飲み会にも参加する。

 

投資する価値がありそうなスタートアップが見つかったら、本当に投資する価値があるのかどうか慎重に検討して、出資するかどうかを決める。投資検討の中で、特に重要なプロセスが「デューデリジェンス(DD)」である。投資判断をするために、必要資料を入手して事業・財務などを精査する。VCのDDでは、投資リスクの精査のみならず、キャピタリストが仮説を立てて、将来の成長可能性や投資採算など「未来の計画をつくる」ことを主たる目的とする。

 

ファーストライト・キャピタルがDDを行う時に重要視しているのが、次の3つの観点であり、その有望性が証明できれば、投資に大きく前進する。

  • 市場の証明:確かな市場として成立するか(対象市場の大きさ、市場の追い風)
  • プロダクトの証明:Must Haveであるか(ユニークなインサイトがあり、作業代替性があるか)
  • 実行の証明:目標達成の文化があるか(数字に対する強度、弱みを補完するチーム)
参考文献・紹介書籍