企業の視点とお客さんの視点を交わらせる
ブランドとは、お客さんの頭の中につくられる「選ぶ理由」のこと。ブランドをつくる時に考えるべきは、「どう見せるか」よりも「お客さんの心の中に選ぶ理由をどう育てるか」である。
ブランドは、受け取る相手の心の中で形づくられる。売り手が決めた価値も、お客さんがそう感じなければ意味がない。大切なことは「自分たちは何を届けたいのか」という企業の視点と、「お客さんはどう感じるのか」というお客さんの視点を行ったり来たりしながら考えることである。
「お客さんの気持ち」と「企業の想い」を交わらせ、ブランドの芯を見つけるためのフレームワークが「クロスピラミッド」である。クロスピラミッドは、2つの三角形が頂点で組み合わさった形をしている。1つは「買い手(お客さん)」、もう1つは「売り手(企業)」を表す。買い手の気持ちと売り手の商品がピタリと重なった時、商品は自然に選ばれるようになる。
ブランドづくりのフレームワーク
クロスピラミッドは、買い手と売り手のパートからなる6ステップで構成されている。ブランド構築を始める際には、徹底的に買い手の視点に立つことが大切である。
【買い手】
①ターゲット(誰に伝えるか)
「30代・男性・会社員」といった属性データだけを眺めても、その人の生活にある現実は見つからない。具体的に顔が見える相手を想像し、「相手の日常」に飛び込み、数字に表れない「生きた感情」を想像するから始める。
②潜在意識(ターゲットが心の奥で感じていること)
日常の意思決定の大半は無意識のうちに、ほとんど自動的に行われている。ブランドづくりにおいて重要なのは、買い手の合理的な理由ではなく潜在意識をとらえること。人は論理ではなく感情で動くという前提を意識すると、売れる仕組みを考えられるようになる。
潜在意識を理解するには「行動」を観察することが鍵になる。その際には3種類の潜在意識から見極める。
- 満足:普段「これが好きなだ」と思う気持ち
- 未充足:「あと少しだけ便利ならいいのに」といった小さな期待
- 不満:「めんどくさい」といった日常で感じるちょっとしたイライラやストレス
【売り手】
⑥買いたくなるアイデア(どう伝えたらお客さんが買ってくれるか)
人がものを買いたくなるのは、自分でもはっきり気づいていなかった欲求に商品が応えてくれた時である。この衝動を生み出すのが、買い手の「潜在意識」である。「買いたくなるアイデア」は、「潜在意識」に対応させてつくっていく。
3種類の潜在意識の内、より買い手に響きやすいのが「不満」、次に「未充足」、最後が「満足」である。同じ商品でもどの「潜在意識」を起点にするかでアイデアが変わる。3つの視点を行き来しながら、商品の価値を確かめていく。
- 満足:価値を強化する
- 未充足:新しい体験に誘導する
- 不満:悩みを解消する
⑤満足感(気持ちのメリット)
満足感とは、商品に触れた瞬間に心の奥でわずかに起こる感情の動きである。落ち着き、親しみ、軽やかさ、誇らしさといった微細な気分の変化が、数字や性能では捉えきれない心地よさを生み出す。こうした感覚が、本人がはっきり言葉にできないままブランドを選ぶ理由になる。買い手がどんな気分を感じているかを探るには次の5つの視点がある。
- 憧れ:自分が少し引き上げられた気持ちになる
- 親しみ:寄り添ってくれる
- ゆるめる:リラックスできる
- 解放:日常の枠を外してくれる
- 回復:落ち込んだ気分が少し戻る
④役に立つこと(機能のメリット)
売れるブランドをつくるには、商品の中に埋もれている価値を見つけ出すことが不可欠である。価値は「役に立つこと」と「満足感」の2つに分けて考える。
「役に立つこと」は、商品を比較する時に最もわかりやすく伝わる要素である。「役に立つこと」は「商品特徴」から考える。買い手が知りたいのは「それによって自分の生活がどう良くなるのか」という1点である。商品特徴を洗い出し、買い手の生活でどんな役立ち方をするのか伝わるように翻訳する。役に立つことを見つけるたけの切り口は次の5つ。
- 味覚
- 利便性
- 快適さ
- 性能
- 向上
③商品特徴(会社や商品が持つ客観的な事実)
組織や本人からすると当たり前だと思って見過ごしている事柄の中にこそ、唯一無二の個性のように、大切なことが眠っている可能性がある。人は自分の姿を完全に客観視することが難しい。この視点のギャップが、新しい価値を生む鍵になる。
商品を客観的に理解するには、分解して考える。以下の1つ1つの要素を丁寧に切り分けていけば、自分でも気づかなかった商品の仕組みや、新たな課題が見えてくる。
- 技術
- 歴史
- 価格・販売形態
- スペック
- 権威