ECが主役に
日本の物販ではEC比率はまだ6%程度だが、米国12%台、中国20%超、英国18%、韓国22%と、ECが小売の主流となって店舗小売業を駆逐するというのが、分野によっては既に現実になりつつある。
日本でも事務用品・文具、家電・PC、書籍・映像ソフト、家具・インテリア・雑貨ではECが主流となっており店舗小売業が補完する関係になり、店舗はショールーム兼お試し・受け取りのオムニチャネル利便拠点、あるいは設置・設定のサービス拠点、あるいは極めて趣味的なセレクトショップに性格を変えつつある。
運営効率でも在庫効率でも店舗小売業に勝るECはマス・メリットが加速度的で、資本の論理からもECへの交代が進まざるを得ない。
EC拡大で店舗はショールーム化する
ECシェアが一定まで達すれば店舗販売の効率が低下して採算を維持できなくなり、閉店ラッシュが広がることになる。EC比率が一桁の間はECが広告効果(ウェブルーミング)も果たして店舗売上はプラスになる。10%台に乗ると部分的に食い合いが見られ始めるが、まだプラス効果の方が大きい。15%を超えると店舗売上はECが増えただけ減るようになり、20%を超えると両方を足しても売上を伸ばしにくくなる。これはナショナル規模のチェーンではほぼ当てはまる。
商品の特性にもよるが、分野総体のEC比率が10%を超えると店舗はショールーム化し始め、20%を超えると『店舗はショールーム』という購買慣習が確立してしまう。家電やPC、家具・インテリアはもうその段階で、店舗はショールーム(店頭はサンプルだけでDCから商品が届く)として採算を取らないと成り立たない。書籍・映像・音楽ソフトまでいくと店舗の存在価値も危うくなる。
オムニチャネル戦略
「オムニチャネル戦略」はECに圧される店舗小売業側の反撃コンセプトとして出てきたもので、それまでの「O2O」から一歩踏み込んで店舗とEC一体の顧客利便と運営効率を追求する戦略と位置付けられる。「O2O」は店舗とEC間で相互に顧客を誘導するマーケティング手法であり、クーポン発行やポイント連携、LINEやインスタグラムなどSNSによるエンゲージメント、スマホのGPSによる誘導など様々なアクションが分散的に行われていた。
店舗小売側が「オムニチャネル戦略」に転じて自社ECを確立するにつれ、店舗から自社ECに誘導して商品情報や在庫情報、購入者レビューで購買を促進したり、自社ECで商品選択と店舗在庫の確認や取り置きを済ませて来店してもらうという相互活用に進化した。それが、オムニチャネル販売の現実であり、次にくるキャッシュレス革命の前提ともなる。
オムニチャネルのハードル
分散的に行われてきたO2Oを店舗と自社ECを一元化する「ストアアプリ」に収斂する段階から「オムニチャネル戦略」の域に入ると考えられるが、それには顧客と在庫を一元管理するシステムが不可欠で、ここで壁に当たることが多い。
店舗と自社ECの在庫連携を果たしても、出店しているECモールとの在庫連携に課題が残る。データは連携しても在庫が物理的に分散しては二重物流のコストとタイムラグが生じるからだ。ECでは店舗販売のような多店舗への在庫分散は避けられるが、在庫を預ける「フルフィル型」ECモールに出店すると店舗販売に似た在庫の分散が生じる。これを避けるには自社DCに在庫を集中してECモールの受注にも対応するのが理想だが、それには「マーケットプレイス型」か「ハイブリッド型」の取引に限定する必要がある。