インセンティブが人を動かす

発刊
2026年1月27日
ページ数
392ページ
読了目安
576分
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行動経済学の入門書
人を動かすインセンティブがどのように機能するのかを、様々な事例をもとに解説している一冊。

単純にお金を与えるだけでは、適切な行動を引き出すことができないとし、インセンティブを設計する時に注意しなければならないことが紹介されています。企業のマーケティングから組織のマネジメントなど、人を動かすために様々なところで用いられているインセンティブのことを理解することができます。

インセンティブはシグナルを送っている

私たちは、目の前にインセンティブが現れると、口で言っていたのとは別の行動を取ることがある。重要なのは、インセンティブはシグナルを送っているという事実を理解することだ。私たちが言うことと、私たちのインセンティブが送るシグナルの間には、矛盾があることが極めて多い。言葉で伝えていることと、インセンティブを一致させれば、シグナルの信頼性は高まり、理解しやすくなる。

 

人間は常に他人のためにインセンティブをつくっている。その結果、私たちの身の回りには他人が設計したインセンティブが溢れている。インセンティブに対するアプローチには次の2つがある。

①経済的なシグナル

インセンティブの対象となる行動を魅力的にするための直接的な経済効果に焦点を当てたもの、つまり、何かをすればお金がもらえるのなら、人はその行動を取りやすくなる。

 

②社会的シグナルと自己シグナル

社会的シグナルとは他人にどう思われているかを気にすること。私たちは、周りの人から特定の方法で見てもらいたいと思っている。それは社会的な体裁を保ちたいからでもあるし、その体裁が表すイメージが自分の大切な価値観や信念を反映しているからでもある。

自己シグナルは概念的には社会的シグナルと似ているが、「自分の行動から自分自身について推測できること」に注目する。私たちは特定のイメージを保ちたいと思っている。自分のアイデンティティに即した行動を取るたびに、私たちは自分自身を肯定的にとらえるようになる。

 

この2つのインセンティブが組み合わさるとどうなるか。ストーリーは、私たちの人生に影響を与える複雑な出来事に、意味を与える。それによって、私たちは目の前の経験をよりよく理解できるようになる。

インセンティブは金銭的な利益を生み出すと同時に、シグナルとストーリーも変える。インセンティブを設計する上で何よりも大切なのは、インセンティブが発するシグナルを機能させることであり、同時に、自己シグナルと社会的シグナルを望ましい方向に向けることである。

 

混合シグナルを避ける

私たちの選択や行動は、自分の価値観を他人に伝えるメッセージになる。そのため、行動や結果に報酬を与えるという形でインセンティブを用いる場合は、それが複数の目標間の力関係にどう影響するかを理解し、コントロールしなければならない。そうしなければ、以下のような矛盾したメッセージ「混合シグナル」が送信されることになる。

 

  • 質を犠牲にして量を奨励する
  • イノベーションを奨励しながら、失敗を罰する
  • 長期的な目標を奨励しながら、短期的な結果に報酬を与える
  • チームワークを奨励しながら、個人的な成功にインセンティブを与える

 

端的に言えば、インセンティブとは人が本来やらないことを行動に動機づけるためのツールである。インセンティブそのものは、良いものでも悪いものでもない。それが道徳的であるかどうかは、使い方の問題だ。インセンティブには強力な効果があるが、それを設計する際には、必要な知識を習得しなければならない。十分なリサーチをしたり、経験豊富な人たちから学んだりすることが助けになる。大事なのは、インセンティブが発しているシグナルが大切な目的と一致するようにすることだ。