伝える前に伝わり方を想像する
アナウンサーは、自分の言葉がどんな印象を与えるかを精査しながら、日々、発言している。この伝える前に伝わり方を想像することが「伝える準備」である。ほんの少し伝える準備をするだけで、少なくとも自分の周りの雰囲気は変えられる。その雰囲気が各所で広がれば、批判や暴言を減らせるはずである。
どんな言葉を、どんなふうに使うかで、印象はつくられる。ほんのわずかな伝える準備で、自分の周りの表情が変わる。同じ意味でもひと工夫することで伝わり方が大きく変わる。ネガティブな表現を使わず、背中を押してあげるように言葉を選ぶ。言葉を選ぶ準備とは、たくさんの言葉を引き出しに集めておいて、その人にフィットする言葉を見繕い、最後に1つに絞ることである。
いい言葉、悪い言葉とは、言葉自体の容姿ではなく「言葉の選び方の良し悪し」に近いものである。その流れは以下の通り。
- 言葉選びに手間をかけられたか
- 選んだ結果に満足できたか
- その言葉は相手に伝わる力を持ったか
この中でも最初の「言葉選びの手間」が一番大切で、難しい。この手間暇こそが、相手に伝わるエネルギーを生む。
日記のススメ
言葉を選ぶためには、たくさんの言葉を引き出しに集めておくことが大切である。そのためには、日記を書き続けることが有効である。日記で文章を書く積み重ねが言葉選びの土台になる。
日記のルールは以下の通り。
①5行だけ書く
5行だけ書くことには、以下のメリットがある。
- すぐに書き終わる:作業がシンプルで継続できる
- 言葉が煮詰まってくる:できるだけ凝縮された言葉で多くの内容を表現したくなる
- 言葉がカラフルになる:少ないスペースで書くために「言い換え」を模索する内に、フィットする言葉に出会う
②ボールペンで書く
間違えたら消せないという緊張感が、言葉のチョイス能力を高めてくれる。後戻りできない筆記用具を使うことで、言葉の瞬発力も養われる。
③「見出しとなる内容」と「ひと手間かかった言葉」を入れる
1日24時間、すべてを文字に残すことは不可能である。そこで「見出しとなる内容」と「ひと手間かかった言葉」を入れるように心がける。それがその日を象徴する要素になる。
④何気ない一言を書き留めておく
涙を流すほどの感動はそんなに毎日あるものではない。しかし、何気ない一言に心が動くことは結構ある。それを書き留めておくのも、日記を書く上で重要なことである。
準備に力を注ぐ
企画のプレゼンテーションや企業の会見などでは、大抵その後の質問に対する「想定問答」などが準備される。その受け答えの質が、プレゼンテーションや会見の「満足度」を高め、信頼を広げていく。
これを生活に置き換えてみるといい。普段、話し慣れていない人が多くの人の前に出て、誤解や説明不足がないように発言するのは難しい。ただ、話終わった後、相手からの質問や内容の確認など、質疑応答に対して答えるのは、それほど難しいものではない。それができれば、大抵のメッセージは伝わる。話すのが苦手な人がスキルを上げられるとすればここである。
人前で発言するのが苦手な人が、鍛える努力をするところは2つある。
①言葉選びに力を注ぐこと
スピーチ自体を短く、エッセンスだけを伝え、早めに質疑応答に入ってしまう。その後の質疑応答まで短く終わらないように、聞いている人の頭に残るフレーズを用意する。
②意地悪な視点を取り入れる
話すのが苦手な人は、想定していない質問に対してパニックになりがちである。そのため、なるべく多くの質問を想定し、準備しておくことが大切である。その中に、意地悪な人だったらどう聞いてくるかという視点を入れておく。このフィルターを通しておくことで守備範囲が広がる。