AIによるマーケティングの変化
今までのマーケティングは「企業・ブランド」側が情報を常に多く持ち、情報を持っていない生活者に「一方的に伝える」ことで成り立っていた。しかし、これからは情報の送り手である企業と同程度に情報を持ち、理解しているAIが生活者と一心同体みたいに一緒に暮らすようになる。
この「世界一賢い生活者」の登場で、買い物の構造が根本的に変わる。企業と生活者の間にAIが入る。間に立ったAIに分析され、解釈され、色々調べられた挙句、生活者にその情報が間接的に伝わるようになる。つまり、「BtoC」は基本的に「BtoA wC」(企業to AI with 生活者)に集約されていく。
世界一賢い生活者の誕生で「認知獲得」が基本的に要らなくなる。必要な商品はAIが教えてくれる。そうなれば、広告戦略、プロモーション手法、顧客獲得の方法論などすべてを根本から見直していく必要がある。
AI時代を生き抜く2つの道
AI時代のマーケティング切り口は4つに分けられる。①と②が「AIルート」、③が「ファンルート」、④は従来の「BtoC」である。
①AIに選ばれたい、どうするか
ブランドはたった3〜5個のAIのオススメに入れるかだ。ほとんどのブランド・商品はこの時点で落ちる。
②AIに選ばれたが、どうするか
3〜5個の中に選ばれたとして、この中から「たった1つ」に選ばれないといけない。この段階では、商品特徴やスペックでの比較はし尽くされている。その中で理性や論理ではなく、ほとんど感覚や感情での選択になる。つまり「機能価値」で絞り、「情緒価値」で決める。ブランドは両方を兼ね備えないといけない。
③AIに選ばれない、どうするか
大多数のブランド・商品はAIに選ばれないため、ほとんどのブランドにとっての主戦場になる。しかし、AIを介さず生活者に直接アプローチするBtoCは、予算的にも確率的にも論理的にも継続的にも、本当に厳しくなる。
残された道が「指名買い」という強力な道だ。つまり、AIに相談する前から決めている「推し」のブランドや商品になることだ。これこそが「ファンルート」である。ファンからの「強い推奨(クチコミ)」による指名買いである。ここで大切なのは、ファン度の高さである。特にAI時代、クチコミにおいて「ファンを増やすこと」より「ファン度を上げること」の方がずっと重要になる。
④AIを使わない人、どうするか
AIを使わない人には、従来通りのBtoCが主になる。但し、AIを直接使わない人でも、周囲の家族など間接的にはAIの影響を受けるため、完全にAIから逃れることは難しい。
これら4つの切り口に加えて、もう1つ大切な道が「選ばれたい、どうするか」という道である。指名買いしてくれる指名顧客との関係を結んで「生涯顧客」になってもらう。これこそが選ばれ続ける唯一の道になる。
選ばれ続けるための唯一の道
AIに選ばれる方法は存在するがしんどい。AIの選考基準がブラックボックスすぎるし、今回選ばれても次回選ばれる保証がどこにもない。その上AIが推奨してくれる商品はどれも魅力的で、毎回比較対象が出てくるために、構造的にリピート顧客が生まれにくい。
AIに選ばれるというステップをすっ飛ばして、最初から人間に選ばれることが決まっている状態を作ること。比較する気もない「指名顧客」こそが「選ばれ続ける」を実現する。
AI時代、最も大切なのは、ブランドとの「関係性」を意識的に育て、長く深くしていくことである。そうすると指名顧客、生涯顧客へと育ってくれる。相手がファンの場合、単なる双方向ではなく「両思い」にする必要がある。片思いから両思いにしないといけない。
ファンベースとは、ファンとの長く続くいい関係性をベースにして、中長期的に売上や価値を上げていく考え方である。
F(Find &Listen):ファンを見つけて傾聴する
すべてはファンを見つけ、ファンに会い、ファンを知るところから始まる。どんな企業にもブランドにも必ずファンはいる。ファンがどんな人で、どこを愛してくれているのかを知らずに施策を打つことはできない。
A(Access):ファンと接点を持ち、交流する
接点を作ることで初めて「お互いを知る」ことができる。
N(Narrative):ブランドの物語を伝える
AI時代、生成できない物語がより価値を持つ。
B(Bonding):絆を作る・深める
長く穏やかにつながり続けるコミュニティを築く。
A(Action):一緒に活動する・共創する
一緒に何かの活動をする。
S(Synergy):ファンとのシナジーを生む
クチコミやレビューなどがAIルートにも好影響を与える。
E(Engage):長く関係し続ける
ブランド側が継続的に働きかける。