ザ・ニューロマーケティング

発刊
2025年11月12日
ページ数
480ページ
読了目安
465分
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ニューロマーケティングの入門書
行動経済学、心理学、脳科学という3つの学問分野の知見を活かして、消費者を購買に誘導する「ニューロマーケティング」の概要を説明している一冊。

人間の脳の無意識の働きについて得られた知見を活かし、「広告の最適化」「商品開発」「価格設計」「店舗設計」など、マーケティングにおいてどのように使われるのか、その基本的なことが書かれています。

ニューロマーケティングとは

ニューロマーケティングとは、神経科学や心理学、行動経済学といった科学の知見と、従来のマーケティング戦略を融合して、人間の脳や無意識レベルの反応を理解し、ビジネスに活用しようというアプローチである。ニューロマーケティングは「決断の科学」とも呼ばれる。ニューロマーケティングを活用し、人間がどのような理由で「買う」という決断を下すのかを明らかにすることができれば、市場環境がどんなに複雑になろうと怖くない。

 

ニューロマーケティングの根底には、3つの分野の学問がある。

  1. 行動経済学:経済理論が想定する「合理的な経済人像」を覆し、人間の非合理性やバイアスを体系的に解明した学問分野
  2. 心理学:人間の動機や知覚、記憶、感情、判断、意思決定に関する知見を活用する
  3. 脳科学:脳波計測や機能的磁気共鳴画像法、アイトラッキング等の計測技術を活用し、購買の背後の「無意識の動き」を解読

 

この3つの研究を通して「人間はこういう時に購買しやすくなる」という法則を人工的に再現できたら、消費者を「購買しやすい人間」にできる。

 

顧客の無意識を捉えるマーケティング戦略

顧客の多くは無意識レベルで商品やブランドを「好き・嫌い」「購入する・しない」と瞬時に判断していると言われる。消費者の購買行動を説明するモデルは多数存在するが、ニューロマーケティングと特に関連が深いものに次の3つがある。

①ULASSASモデル

消費者がある商品を知ってから購入に至るまでの心理プロセスとして、2015年以降はULASSASが普及している。この特徴は「SNSのUGC(インフルエンサーや口コミ)が起点になっていること」「消費者が広告ではなく第三者の発信で動くことをモデル化したこと」であり、これが比較検討の短縮化に大きく貢献した。ULASSASの主な流れは以下の通り。

きっかけ:広告・UGC・推し動画 → 検索:レコメンド動画、ストーリーズ → マイクロリサーチ:AI、音声検索1〜2クエリ → 購入:EC、店舗、BPIS → 経験:開封し、レビュー投稿 → 権利擁護:推奨し、これが次の「きっかけ」となる

 

これを実装するには以下の3つがポイントとなる。

  1. EXPLOREは検索窓より「フィード関連動画」
  2. 検索は「最終確認」へ縮小
  3. UGC・FAQを整備し、検索短縮の最良施策

 

②デュアルプロセス理論(システム1とシステム2)

人間の意思決定は自動的・直感的な「システム1」と意識的・論理的な「システム2」の両面から成り立つ。消費者は必ずしも論理的に商品の良し悪しを吟味してから購入するわけではなく、システム1による感覚的な好悪判断が先行し、のちにシステム2で合理的な説明を付け加える。

 

③ブランド・パーソナリティ理論

「ブランドには人間のように性格や個性がある」と捉える。消費者の脳が「このブランドは自分の理想の自己イメージと合っている」と判断すると、理屈では説明できない愛着や忠誠心が生まれ、競合商品より価格が高くても選ぶ行動が顕在化しやすい。

 

「買いたくなる」仕掛け

伝統的な広告やキャンペーンは、消費者に直接的・明示的に「買ってください」と促すものだったが、近年は行動経済学が示す「非合理な人間行動メカニズム」を応用し、無意識レベルに働きかけるアプローチが増えている。その代表例が「ナッジ理論」である。

ナッジとは、行動を選択する自由を保ちつつも、意思決定の「環境設計」を変えることで、より望ましい選択へと自然に誘導する手法である。マーケティングでは「お得」「便利」「簡単」といったプラス要素を自然に印象付ける仕掛けを構築し、最終的に購買行動やブランドロイヤリティの向上を狙う。

 

行動経済学では次のような「人間の非合理行動」が数多く報告されている。

  • デフォルト効果:初期設定になっている選択肢をそのまま受け入れやすい
  • 損失回避バイアス:同じ価値でも、得る喜びより失う苦痛を強く感じる
  • 社会的証明:周囲の人が選ぶものも自分も選びやすい。バンドワゴン効果。

これらのバイアスを意図的に活用・補正するのがナッジの基本発想である。マーケティング分野でのナッジ活用は「消費者が実際に喜ぶ購入体験や商品選択にどう誘導できるか」という観点で急速に広まりつつある。

 

ナッジの手法には様々なバリエーションがあるが、マーケティングで頻繁に活用されるものは次の通りである。

  1. デフォルト設定:デフォルトで「自動更新」や「保険付き」などがチェックされている
  2. フレーミング:メッセージの表現を変えるだけで、消費者の心理に影響を与える
  3. インセンティブ表示:小さな特典やポイント還元率などを強調し、「買ったら得する」という印象を高める
  4. 社会的証明:「多くの人がこの商品を買っています」という情報を提示することで、安心感や仲間意識を刺激する。
  5. ステータス・プライミング:消費者のステータス獲得意欲を刺激する

 

参考文献・紹介書籍