自分の人生は自分でマネジメントする
ほとんどの50代社員は、あと何年かで定年を迎えるにもかからわず、定年後の人生について、きちんと準備をしていない。そして、多くの人が定年後に再雇用制度を活用するが、責任ある仕事は与えられず、給与は半減する。60歳を過ぎてからでは人生の選択肢が極端に少なくなるので、定年を待たず50代半ばまでに新たな道を探すなり、起業するなりしていれば、もっと違った後半人生を送れる。
多くの人がほとんど準備をせずに50代を過ごしてしまう問題は2つある。
- 長い間同じ会社に勤めたことによって、必要なものはすべて会社が与えてくれるという環境に慣れ、受け身の姿勢が身につてしまっていること
- 具体的に何から学べばいいのかわからないこと
これら2つの問題を同時に解決する方法は「自分の人生は自分でマネジメントする」ことに尽きる。長寿命化社会における後半の人生戦略は自分でマネジメントしない限り、楽しく幸せに生きていくことはできない。後半人生を充実させるための第一歩は、温室から自ら意識して抜け出すことである。
ドラッカーは自らマネジメントするということについて「自分が最も貢献できる場所に身を置き、常に成長する」ことだと説明している。終身雇用制が機能しなくなった今、置かれる場所は組織に決められるのではなく、自ら決めなければならない。
ドラッカーの問い
人生後半の戦略を考える時には、ドラッカーの正しい問いに向き合い、活用しながら考えることが、自分なりの正しい答えを見つける最良の手段になる。
①強みは何か
50代からの人生で幸福感を味わいながら働いて過ごしいくには、自分の強みを活かす働き方を選択すべきである。そこで、自分自身について知るために最初にやるべきことは、前半戦の人生の棚卸である。
②いかなる仕事の仕方を得意とするか
強みの資質を磨き上げ、形を整えることで強みとなり、価値を生む。その実践にあたるのが「勝ちパターン」である。棚卸では、過去の自分の歴史の中でうまくいったことや大きな成果につながったことを思い返して分析する。
③他の人には難しいが自分には簡単にやれることは何か
生まれ持った才能に気づくための最も有効な手立ては、他人からのフィードバックである。誰かから自分についてのフィードバックを受けた時は、それを強みに気づくチャンスと捉え、注意深く耳を傾けること。
④何もしなければ何が起こるか
人生の後半戦を楽しく生きていくためには、何事も行動に移さなければならない。動かなければ、今まで通りの時を過ごすことになってしまう。研修やセミナーで学んでも、行動しない限り何の意味もない。
⑤あなたは、何によって憶えられたいか
なりたい自分になるためにはどうしたらいいのかを考える。まずは実現したい自分の姿を明確に言語化する。あくまでも今の延長線上でのなりたい自分の姿でありながら、今とは違う、なりうる人間として思い浮かべることが大切である。
⑥自らにとって価値あるものは何か
「憶えられない」自己を実現していく時に、確認しておかなければならないことは自分の価値観である。価値観とは自分自身の行動や意思決定する時の基準となる、ものの見方や考え方のことである。自分の価値観こそが判断基準となる。
⑦自らの時間をどのように使っているか
新しいことを始めようとする人が途中で挫折する原因のほとんどが、タイムマネジメントを置き去りにしたままスタートしてしまうことにある。タイムマネジメントとは「配分」を管理すること。自分がどのように時間を使っているかを可視化するところから始める。
⑧仕事に貢献せず、ただ時間を浪費させるようなことを私は何かしているか
とにかく大胆に時間の整理をし、やめることはやめて、その結果生み出したわずかな時間をできるだけ大きな塊にする。
⑨まだ行っていなかったとして、今これに手をつけるか
すべての仕事が本当に生産的で必要不可欠な仕事なのか、やり方を変えて効率化できないのか見直す。
⑩どのような貢献ができるか
貢献に焦点を合わせることで目標を正しく高く設定し、何よりも自分自身の可能性を最大限広げられる。自分の強みやスキル、経験知、価値観をフル活用して、どのような貢献ができるかを考える。
⑪違いを生み出すために、何を学び、何をなすべきか
行動とは、自分をさらに磨き、他の人とは違う存在として確立していくことである。
⑫得るべき所はどこか
安定を求める脳は変化を嫌い、いつまでも惰性に従って生きていくことを望む。そのため、自分にとって本当にふさわしい環境はどこにあるのかを考えることが大事である。ふさわしい場所を探すには「動く」しかない。
⑬明日何をしますか。何をやめますか
最初にやめることを決める。そして、手放してから行動する。試行錯誤を繰り返しながら定着させる。すると、だんだんと意識が変わってくる。