Z世代の幸福度が高い要因は家族関係にある
Z世代は「失われた30年」しか経験していない。しかし、調査によれば、Z世代は「かわいそう」どころか、「とても幸せ」であり、楽しい日々を満足して過ごしている。Z世代の幸福度は1994年から2024年で以下の推移を見せている。
- 生活に十分満足している:9.4%→30.0%
- 生活が非常に幸せ:19.7%→33.5%
- 生活が非常に楽しい:12.2%→29.5%
幸福度の柱は「経済社会状況」「心身の健康」「(人との)関係性」の3つからなる。若者調査において、特筆べき変化が見られたのが「関係性」であった。中でも変化が際立っていたのが「家族」との関係である。30年前と比べると、家族というコミュニティに安心感や幸福感を見出す若者が大きく増えている。つまり、Z世代の幸福感の裏には、これまでとは異なる「親密な家族関係」がある。
Z世代とその親は社会の価値観やカルチャーが似通っている
かつては、子供と親世代の間にはっきりとした価値観やライフスタイルの断絶があった。前時代的な古い価値観を持つ親が「こうしなさい」と押し付ける。それに対して子供は、「大人は何もわかっていない」と反発しながら自分なりの価値観を模索していく。
しかし、今の親子は激しくぶつかり合うことなく平和に仲良く共存している。その背景には、ある時代まで世代や年齢によって分断されていた価値観や嗜好の違いが縮まってきている現象がある。つまり、親子間のギャップが小さくなっている。反抗期を経験する若者が減少している背景には、親が価値観のそんなに変わらない「若者にとって話の分かる」存在になってきていることがある。
団塊ジュニア(1971〜1974年生まれ)などZ世代の親にあたる世代は、ファミコンやポケベル、カラオケ、クラブといったカルチャーにリアルタイムで触れてきたが、こうしたコミュニケーション手段や娯楽も、形を変えつつ現在の若者に受け継がれている。Z世代とその親世代は趣味やコンテンツの話も非常に合うわけである。この「分かり合える感覚」が、親子間の距離感を近いものにしている。
母親の存在の台頭
現代の親子関係は、1994年から2024年で以下のように変化している。
- 家でひと所に集まって家族とよくおしゃべりする:57.8%→72.3%
- 最近誕生日プレゼントをくれた人:父親24.6%→50.2%、母親37.8%→69.5%
- 家の中で一番多くいる場所:リビング56.4%→83.6%、自分の部屋32.3%→11.5%
- 自分のことを一番理解している相手:母親31.6%→50.4%、同性の友達44.2%→37.4%、異性の友達16.4%→5.7%
- 価値観や考え方に一番影響を与えている相手:母親21.6%→41.2%、同性の友達39.1%→32.9%、異性の友達18.4%→5.6%
「若者調査」によれば、かつては同性の親友や異性の友人、恋人などが担っていたポジションを、母親が次々と奪っている。かつては同性の親友がトップだった「価値観や考え方に一番影響を与えている相手」でも、母親がその座を獲得している。一方で、同性の親友と父親はそこまで大きな変化がみられない。ほとんどの項目で異常なまでに存在感を落としているのが「異性の親友(恋人含む)」である。
1990年代の若者は恋愛至上主義であり、多くの人が恋愛的な行動をとることにこだわっていた。異性間の交流は活発で、中でも熱心な一部の男性が複数の女性にアプローチしていたこともあり、特に女性は「男性慣れ」していた。しかし、現在ではそうした傾向は落ち着き、恋愛的な行動を無理にとろうとする若者は大きく減り、結果として「女性の男性離れ」という現象が起きている。
母親は頼れるメンターに
Z世代は母親を「心のよりどころ」とするだけでなく、「道しるべ」にもしている。これは、母親がかつての「家を支えてくれる存在」から「尊敬に値する存在」へと変化してきたことが影響している。かつては、母親は大学受験や資格試験を経験していなかったり、就労経験が少なかったりと、父親に比べて社会から遠く、ロールモデルや人生のアドバイザーとしての役割を担いづらい側面があった。
現在では、女性が男性と同じように学歴社会を歩み、社会の中で実績を積んでいるケースも増えている。受験や就活、恋愛などの重要な悩みの相談相手として並走し、自身の経験を活かして一歩先回して考え、程よく必要なサポートをしてくれるメンターとしての役割を果たせるようになった。
さらにもう1つ、大きな関係性の変化は「母親と共通の趣味を持つ若者が激増している」ということである。恋愛の優先度が以前ほど高くなくなった今、母親が子供の価値観に変化を与えるファクターとして存在感を増しており、それが消費行動に大きな影響を与えている。