良い売上、悪い売上 「利益」を最大化し持続させるマーケティングの根幹

発刊
2025年10月14日
ページ数
352ページ
読了目安
501分
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継続的に利益を生み出す顧客を最大化する方法
ビジネスの本質は、継続的に利益を生み出す顧客を最大化し、一過性の売上にしかならない顧客を最小化することだとし、そのための考え方と手法が解説されています。

どのようにして、継続顧客を見つけ出し、最大化するために戦略に落とし込めばいいのか、マーケティングの根幹となる考え方を理解することができます。

継続顧客を最大化せよ

「良い売上」とは、継続的な利益につながる売上で、高い累計利益を生み出す。
「悪い売上」とは、一過性の売上で、ほとんどの場合、損失を生み出す。

世の中のほとんどの事業は新規獲得に大きなコストをかけているため、1回きりの購入や利益で終わってしまうと、最初にかけたコストを回収できない。その赤字を埋めているのは、リピーターからの利益である。つまり、「良い売上」になる顧客を最大化し、「悪い売上」になる顧客を最小化することが、ビジネスの本質だと言える。

 

顧客をよく理解し、長期の生存戦略として意識的に「良い売上」を最大化し、積み重ねていく。これを実現するためには。売上から生み出されている利益に着目し、長期的な視点でビジネスにより組むことが必要である。

  • 売上ベースではなく、利益ベースで数値を追う
  • 短期ではなく、利益の継続性に着目して、長期間でビジネスを考える

 

同じ売上でも、新規顧客と継続顧客では営業利益が違う。これは「かかる費用が大きく違う」からである。事業においては新規顧客の獲得を軸としながらも、2度以上購入や利用する既存顧客の継続購入の向上に注力する。新規顧客の内「将来、継続顧客になりやすい人」の割合を多くできれば、新規獲得時の赤字をより早く効率的に回収する見込みが立つ。それが将来の利益性と利益額の高さにつながる。

利益性の高い既存顧客も永遠ではなく、一定数が必ず離脱する。その離反する既存顧客を補填し、さらに増やすために、潜在的にリピーターになりやすい新規顧客を多く獲得し、リピーターに育成し続けることが、どんなビジネスでも必須になる。

 

長期でLTVを計算する

すべてのビジネスには、1回きりの購入で離反してしまう顧客が残した損失を、継続購入し続けている既存顧客から得た利益で埋めているという構造がある。そのため時間軸をもって顧客の購入行動を初回購入から継続購入までのつながりで見る長期思考が必要である。

 

特に継続購入型ビジネスにおいては「顧客生涯価値(LTV)」が重要な指標となる。LTVとは、1人の顧客が企業との取引期間を通じて、企業にもたらす利益の総額を予測する指標である。LTVの計算には、次の2つが重要な前提となる。

  1. 売上ベースではなく、営業利益ベースでLTVを計算する
  2. 短期ではなく、複数回の購入サイクルをカバーする長期間でLTVを計算する

LTVが高い顧客とは、長期にわたって企業に利益をもたらすロイヤル顧客、すなわち「良い売上」をもたらす顧客である。損益分岐点を超えて事業を存続・成長させるには、LTVが高いロイヤル顧客を増やし、良い売上を積み上げる必要がある。

 

LTVを向上させるためには、次の6つの重点項目への取り組みが有効である。

  1. 顧客単価の向上(アップセリング、クロスセリング、価格戦略の見直し)
  2. 利益率の向上(コスト削減、高利益商品の強化)
  3. 購入頻度の向上(効果的な訴求、顧客エンゲージメントの強化、ロイヤリティプログラム)
  4. 購入の継続性の向上・離反の抑制(顧客満足度の向上、定期購入の促進)
  5. 新規顧客の獲得コストを下げる(効果的な訴求、効果的なマーケティングチャネルの選定。口コミや紹介プログラム活用)
  6. 既存顧客の維持コストを下げる(効果的な訴求、自動化とCRMの活用、顧客セグメンテーション)

 

良い売上をもたらす顧客を見つける

「どの顧客が利益につながる売上をもたらしているのか」を実務上で把握するための「カスタマーダイナミクス分析」の方法がには、次の3つがある。

 

ID POS分析は、社内の顧客管理データやPOSデータを使った最も簡易的で基本的なカスタマーダイナミクス分析になる。

まずPOSデータを使って、顧客(ID)の過去の売上ランキングと、直近までの累計での売上ランキングを作成し、その変化を見る。ランキングの変化を見ることで、顧客をいくつかのグループに仮分類することができる。

  • 3年前も直近3年累計もランキング上位にいる方:継続的なロイヤル顧客
  • 3年前はいなかったけれど直近累計に来た方:最近ロイヤル化した顧客
  • 3年前は上位だったのに直近3年累計にランクインしていない方:離反顧客

分類ができたら、次に「ロイヤル顧客」と「離反顧客」や「その他一般顧客」とで、何が違うのかを分析する。購入履歴、どんな接点で商品に触れてきたか、これまでのプロモーション施策への反応、住所などのでもグラフィック情報に違いはあるかといった点を比較する。それぞれの顧客に連絡が取れてご協力頂けるなら、個別にお話を聞く「N1分析」が有効である。

このような分析をもとに、将来ロイヤル顧客になりそうな方々に対してどんな商品を提案すべきか、どう接触するのが効果的か、どの購入経路を強化すべきかといった戦略に落とし込む。