大事なことのために時間をつくる
「メイクタイム(時間をつくる)」は、生産性とは関係ない。作業効率を高めるとか、やるべきことを早く終わらせる、家事をアウトソーシングするという話ではない。これは自分にとって大事なことをする時間をもっとつくるためのノウハウだ。
21世紀の今、2つの大きな力が時間の1分1秒を得とうと競い合っている。
- 多忙中毒:忙しいのを良しとする考え方
- 無限の泉:スマホのアプリなど、コンテンツが絶えず補充されるもの
この2つの要因が強力なのは、これらが生活のデフォルトになっているからだ。職場にも文化にも「忙しい状態や注意散漫な状態が正常で当たり前」というデフォルト設定が組み込まれている。こうした状態に「意志力」は脱出口にならず、「生産性向上」も解決策にならない。
「メイクタイム」は、何に集中したいかを決め、それを実行するためのエネルギーを蓄え、デフォルトの悪循環を断つことによって、自分の生き方に意識的に向き合うための枠組みである。「スケジュール」をコントロールできなくても、「注意」を向ける先は完全にコントロールできる。
メイクタイムの仕組み
メイクタイムは、毎日「4ステップ」を繰り返すだけである。
①その日に優先する「ハイライト」を1つ決める
「長期目標」と「タスク」の間の中間的な活動に集中することが、ペースを落とし、日々の生活を充実させ、時間をつくる秘訣だ。何のために時間をつくるのかを決める。毎日、その日の優先事項としてスケジュールを確保する活動(ハイライト)を1つ決める。「今日のハイライトを何にしよう?」を考えることで、自分の大事なことに時間を使うようになり、他人の優先事項に反応してまる1日を無駄にしなくなる。
ハイライトは3つの基準をもとに直感で選ぶ。
- 緊急性:今日やらなくてはいけない、最も急を要することは何か
- 満足感:何をハイライトに選べば、1日の終わりに最大の満足感が得られるだろうか
- 喜び:今日を振り返った時、一番喜びを感じられるのは何をした時か
- 計画を書き出す
- 「優先順位」を明確にする
- 細かい雑事をまとめて、1つの大きなタスクとして扱う
- ハイライトを予定に入れる
- 予定を「ブロック」する
- 1日をデザインする
②特別な戦術を使ってハイライトに「レーザー光線のように集中」し続ける
今この瞬間に注意を集中させる。レーザー光線のようにハイライトに一点集中している時の気分は最高だ。この気分こそが、自分の大事なことを主体的に選ぶことで得られる、何よりの見返りだ。
注意散漫はレーザーモードの大敵だ。気を散らさないようにするには、すぐに反応できないようにするのが一番である。メールやSNS、ニュース速報などの気を散らすテクノロジーを調整して、レーザーモードに入りやすくする。要はちょっとだけ不便にするのだ。
- スマホからメールやSNSなどの無限の泉アプリを取っ払う
- 「ログアウト」する
- 「通知」をオフにする
- ホーム画面を「からっぽ」にする
- 「メールタイム」を決める
- ニュースを見ない
③時間と注意力を1日中コントロールするために「エネルギー」を蓄える
集中力を高め、大事なことのための時間をつくるには、脳にエネルギーが必要である。そのエネルギーは体をケアすることで生まれる。運動や食事、睡眠、静寂、親密な時間などでバッテリーを充電する。
エネルギーを日々高めることができれば、心身の疲れのせいで無駄になっていたかもしれない時間を、ハイライトのために利用できる。エネルギーをチャージするために最小限の変化で最大限の効果が得られる手法は、次の原則に沿ったものである。
- 動き続ける
- 「リアルフード」を食べる
- 「カフェイン」をうまく使う
- 喧騒を離れる
- 親密な時間を過ごす
- 規則正しい時間を過ごし暗闇の中で眠る
④1日を振り返って簡単な「メモ」をとる
寝る前にメモをとる。どの戦術を続けたいか、改善したいか、やめたいかを考える。その日のエネルギーレベルがどうたったか、ハイライトの時間をつくれたか、その日に何を喜びに感じたかを振り返る。
何日かメモをとっていると、自分のエネルギーと注意のレベルが1日を通してどう変化するかを意識し、それらを向けたい場所に向けられるようになってくる。