THE CAPTAINSHIP 絶望を希望に変えるシン・リーダー論

発刊
2025年8月29日
ページ数
288ページ
読了目安
303分
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先が見通せない時代に求められるリーダーとは
従来のトップダウン型ではなく、メンバーに並走しながら、チームを活性化させるリーダーのあり方「キャプテンシップ」を説いている一冊。

元サッカー日本代表監督である著者が、今治の教育現場で取り組んでいることなどを交えながら、これからの時代にあるべきリーダー像を語っています。

先が見通せない時代のリーダーシップ

キャプテンシップとは「正解やロールモデルのない時代に、私欲のない自分の信念を持ち、メンバーに並走しながら各々の主体性を引き出し、チーム全員で共有した目的に向かって次の時代を切り開いていく、新しい形のリーダーシップ」である。

従来型のリーダーのイメージが「三角形の頂点として、チームの先頭を走りながら目標へぐいぐい引っ張る人」だとしたら、キャプテンシップを持つリーダーは「円の中でメンバーの横に立ち、共に試行錯誤し、メンバーと同じ目線で目的に向かう人」である。余計なプライドを持たず、謙虚で、強さも弱さもさらけ出し、失敗を成功に変えていく中で多くの人に応援されながら、その人たちと一緒に前に進んでいくリーダーである。

 

目的に向かって夢中で行動するキャプテンシップを持つリーダーと、その仲間たちが作るチーム、その姿勢や生き様を目の当たりにして心を動かされた周囲の人たちまでも、各々の力を持ち寄り、自然と応援の輪が広がっていく。だから、キャプテンシップを持ったリーダーのいるチームでは、体育会系的な上下関係がなく、共通の目的のためにお互いを認め合うカルチャーがあるため、自然とメンバーそれぞれの良さが引き出されていく。

 

キャプテンシップに不可欠な要素

「こうすればいい」と指示したい気持ちを「どうしたい?」という相手への問いに変え、メンバーの主体性を引き出し、1人1人の「エラー&ラーン」を見守り、ギリギリのところでサポートする。危機的な状況下など、状況によっては強いリーダーシップでチームを引っ張ることが必要な場面はある。理想は、三角形の従来型のリーダーシップを持ちつつ、円形のキャプテンシップを発揮できるリーダーであることである。

 

従来型のリーダー、キャプテンシップを持ったリーダーのどちらにも共通して不可欠な要素は、本人がチームの最上位の目標、つまり勝利や利益に向かって、格好つけずに必死で挑む姿を見せることである。

自分のためだけにチャレンジするリーダーは失敗する。チーム、コミュニティ、社会のため、目的に向かう私欲のない姿勢がメンバーに伝わった時、自発的に「応援」が生まれる。

 

キャプテンシップは、次の4つの要素から成り立っている。

  1. 物事を簡単に諦めないタフさ
  2. 想定外の事態にチームで対応する適応力
  3. 自ら進むべき道を考え、行動できる主体性
  4. 多様な人を巻き込み同じ方向性に向かい、共に助け合う「共助のコミュニティ」を作っていく力

 

どんなにテクノロジーが発展しても、人間は1人では生きていけない。何らかのコミュニティやチームに属する上で、その集団の核となるのは、「俺について来い」というリーダーではなく、人を巻き込んでいくキャプテンシップを持ったリーダーである。

 

利他の心を持つリーダー

変化の激しいこれからの時代、リーダーの経験知が及ばない事態が次々と起きてくる。その時、リーダー1人の力で引っ張っていくリーダーシップは、ともするとチームを間違った方向に向かわせることになりかねない。

一方、キャプテンシップは、違いだらけのメンバー1人1人の主体性を対話によって横から引き出し、生かしつつ、対話を繰り返しながら全員を渦のように巻き込み、チームを同じ目標に向かって、誰1人取り残すことなく動かしていく力である。そこにはネガティブな上下関係もなければ、リーダー不在によってチームが目標を見失うこともない。

 

キャプテンシップを持ったリーダーは、主体性を持つ様々な人たちの輪の中にいて、1人1人と「君はどうしたい?」「何か手伝えることはある?」などと対話しながら、相手を当事者と同時に、目標を掲げるリーダーの応援者に変えていくイメージである。

仲間と共同することで新たなアイデアが生み出され、周囲もまた生かされていく。そんな共助のコミュニティを作ることのできる人間が、これからの時代に求められる新しいリーダー像である。

 

先の見えない時代だからこそ「自分は何のために生きるのか」「君は何のために生きているのか」と、人間が生きる意味を哲学的に問い直すメッセージを語ることのできる人が求められている。確かな人生哲学のもとに、「何のため?」を掘り下げていくことで、「自分のためだけでなく、世の中のために」「社会のために」「チームのために」という目標が浮かび上がってくる。キャプテンシップを持ったリーダーは、そういう「利他の心」から生まれる目標設定ができ、それをチームの1人1人に提示して当事者意識を持たせられる人である。

 

大切なのはリーダーという肩書きではなく、利己的ではない信念に基づいた志や目標がある人間であること。「自分は良いリーダーになる」などと主語を「I」にするリーダーは、だいたい挫折する。それでは人がついてこない。キャプテンシップを持ったリーダーの主語は常に「We」である。

 

 

参考文献・紹介書籍