AI活用が前提の時代に求められるスキル
新しいことに興味を持ったら、まずAIに聞くのがよい。これまでの英知がそこに詰まっている。そしてAIがわかりやすく整理してくれる。すべてが正しいとは限らないが、好奇心さえあれば、概ね結論から知ることができる時代を迎えた。知識はほぼ無料で、すぐに結果から知ることができるようになった。
今後は教育のあり方も変わっていく。知能があるかどうかは重要ではなく、プロジェクトベースで目的を達成するために協力ができるかどうかが大切になる。その際、適切なツールを使えるかどうかが優秀さを測る指標となるだろう。
AI活用を前提にしたプロジェクトを推進する時代に、人間に求められる重要なスキルは3つある。
- 好奇心:強烈に何かを理解したいという目的意識
- 諦めない気持ち:ゴールを理解した上で取り組むので、諦めない気持ちが重要となる
- イノベーティブ:自らの専門分野を磨き、知識や考え方を組み合わせることで新しいものを生み出す
こうしたスキルを意識することで、同僚と大きなプロジェクトを推進できるようになる。
「変わらない」ものを見定める
多くの人が、毎日の小さな変化に振り回され、すぐに反応しようとしがちだ。しかし、短期間に多くの変化が同時に起こると、それらに追いつくのは難しい。
変化が激しい最中に早まって行動すると、時間やコストを無駄にするリスクがある。AIモデルが進化する速度は、企業のモデル導入と展開のスピードをはるかに超えている。そのため、価値のある核心を確認することに集中するといい。
AIは付加価値を提供する技術であり、全く新しいビジネスモデルをゼロから作り出すことには向いていない。そのため、毎日のAI技術の進展や変化を追い続ける必要はない。むしろ大切なのは、自分の「変わらない」コアとなるビジネスモデルを見定め、そのモデルにAIがどのように付加価値を与えられるかを検討することに尽きる。もし付加価値を見込めないのであれば、焦らずに変わらない基盤を維持しつつ、状況に適応すればよい。
技術の進歩は決して人間性から遠ざかるべきではない。技術は常に人間を中心に据えるものである。人間性自体は何千年も変わっていない。多くの場合、私たちは変わらぬ人類の需要に応える形で技術を活用してきたわけで、その方法が時代によって異なるだけだ。だからこそ、常に人間を中心に据えて考えることで、この世界の「不変の要素」を見つけ出し、自分が何を大切にすべきかを理解できる。技術がどれほど進化しても、この軸を見失うことはない。
AIを使いこなす人になれ
AIはある日突然、人の仕事を奪う訳ではない。私たちは段階的に仕事を細かく「タスク」ごとに分解していき、少しずつAIに任せるタスクを決めていくといったように、人の役割を徐々に変えていくことが大切だ。AIの影響について考える時、「仕事がなくなるか」ではなく「AIがどのタスクを担うのか」を問うべきである。
AIは反復作業や強力な推論は得意だ。一方で、協調や意思決定、管理などは不得意である。データ処理や反復作業が多い職種は間違いなくAIに置き換えられやすい。しかし、AIのはまだ限界があり、協調や意思決定、管理といった「人が必要な業務」には対応できない。
AIは「仕事全体」を奪うのではなく、いくつかの分解した「タスク」を代替する。例えば、デジタルワーカーが文章作成のタスクを完了するには、通常「発想、原稿作成、修正」の3段階が必要になる。マーケティング担当者やライターにとって最も大変なのは、最初の「発想」の段階である。
この最初の一番頭を悩ませる部分は、AIの得意分野である。アイデアが必要な時、Chat-GPTを開いて10個のアイデアを求めたり、下書きを考えるように指示したりすれば、すぐにたくさんの案を出してくれる。生成AIは、対話を通じてインスピレーションやアイデアを提供するために設計されたものである。但し、アイデアを出す以上、必ずしもすべてが正確とは限らず、異なる視点が出てくることもあることを理解する必要がある。
すべての人がAIの専門家になる必要はない。しかし、AIを補完ツールとして活用することが重要となっている。AIで何ができ、何ができないのか、どんな問題を解決し、どのような価値を生むのかを常に見極めることが求められている。生成AIを正しく理解し、補完ツールとして活用する限り、AIに仕事を奪われるリスクは回避できるだろう。
重視すべきはハードスキルよりも「企図心(目的意識)」を持って、ツールを活用しようとする意欲があるかどうかだ。より強い「企図心」や動機を示す人が抜擢され、成功の鍵を握ることになる。